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2016(平成28) 年度 生存圏科学 萌芽研究 12

更新日: 2016/08/25

研究課題

土壌における微細気泡の包括的移動機構の解明

研究組織

 代表者 濱本昌一郎(東京大学大学院農学生命科学研究科)
 共同研究者 上田義勝(京都大学生存圏研究所)
二瓶直登(東京大学大学院農学生命科学研究科)

研究概要

近年,微細気泡(ファインバブル,FB)の地盤環境工学分野における利用が注目されている.FBは気泡径がおよそ数十nm以上数µm以下の微細気泡で,表面積が大きく,液体中の滞留時間も長くなるため分散性に優れ,気液界面での高い物理・化学的吸着効果を有する.これらFBの有する理化学性を活用した土壌浄化工法が検討されている.土壌浄化にFBを利用する際には,FBの土壌内挙動の理解が必要不可欠である.土壌は固相(土粒子・土壌有機物),液相(間隙水),気相(空気)からなる複雑な系であり,間隙水中には,各種イオン類に加え,土粒子や土壌有機物由来のコロイド状物質,汚染物質(汚染土壌の場合)など様々な物質(共存物質)が混在している.土壌内におけるFBは,気泡態ならびに溶存態として存在し,固相や汚染・コロイド物質への分配,共存イオンとの相互作用を伴う.これまでの研究成果から,注入したFBは多孔質体内に捕捉されること,FBの流出特性はFB水の注入速度やFBの生成ガス種に影響を受けることが明らかとなった.しかし当該研究は,多孔質体内の気泡態FBの移動特性のみに着目したものであり,実際の土壌内で生じるFBおよび共存物質の移動現象を包括的に捉えるには至っていない.本研究では,室内実験からFBおよび共存物質の土壌内移動機構を解明し,FBに関する包括的土壌内移動モデルの構築を目指す

研究目標を達成するため,各項目について下記の点について検討を行う.

1. FBの理化学性把握,固相および汚染・コロイド物質への物質分配機構の解明

土壌試料として,ガラスビーズ・豊浦砂に加え,土壌汚染サイトを想定した国内自然土壌として,火山灰土(東京・福島),褐色森林土(愛知),低地土(埼玉)を選定する.+FBの液相への溶解特性と,FBと共存イオン種との相互作用について,異なるpHやEC条件および共存イオン種条件で調べる.室内バッチ試験からFBの土粒子,汚染物質,各種土壌試料から抽出した無機・有機コロイド物質への吸着・脱離実験を行い,分配係数,脱離/吸着係数などの物理パラメータを同定する.

2. FB移動機構の解明と物質移動パラメータ予測式の提案

室内土壌カラム実験を行い,FBおよび共存物質(汚染物質,コロイド物質,各種イオン類)の流出特性を調べる.カラム実験は,汚染物質を含まない土壌と,汚染物質を混入した模擬汚染土壌の2種類を用いて行い,両者を比較することでFB担体汚染物質およびコロイド・FB担体汚染物質移動を評価する.水中でのFBとコロイド物質の区別には,共振式質量分析計を活用する(本年度導入予定).FBの流出特性から,FBの土壌内移動を規定する物質移動パラメータ(分散係数,捕捉係数など)を決定し,土壌物理特性やFB特性などに基づくパラメータ予測モデルの提案を行なう.

3. 土壌における微細気泡の包括的移動モデルの構築

FBの地盤内移動モデルは,地盤内のコロイド態物質移動に関する支配方程式を修正する.具体的には,液相に存在するFBの移動を,土壌固相への分配(捕捉・分配係数)を考慮した移流・分散として記述し,飽和浸透方程式を組み合わせる.ここで,「1.」で得られる物質分配機構,「2.」で提案されるFBの物質移動パラメータの予測式が,移動モデルに組み込まれる.さらに,FBとコロイド・汚染物質の相互作用(吸着)を考慮して,コロイド・FB担体汚染物質の土壌内移動モデルの構築も行なう.また,化学反応連成シミュレータであるPHREEQCを上記FB移動モデルにカップリングさせることで,気泡態FBの液相への溶解,さらに溶存態FBと液相中イオンとの化学反応を考慮した気・液・化学連成場での地盤内の微細気泡移動モデルを開発する.

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2016年8月3日作成

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