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2012(平成24) 年度 生存圏科学 萌芽研究 5

更新日: 2017/09/23

研究課題

有害物質を排出しない木質瓦礫減量化のための諸課題研究

研究組織

 代表者 今井友也 (京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 綾 (京都大学生存圏研究所)
樫村京一郎 (京都大学生存圏研究所)
齋藤洋太郎 (奈良先端科学技術大学院大学)

研究概要

2011 年 3 月における東日本大震災では、津波による甚大な被害が沿岸部で発生した。現在、復興を目指して様々な作業が進められているが、被災地における瓦礫の処理は最も大きな問題の一つである。瓦礫の内訳をみると、木造家屋の破壊で生じた木質系瓦礫は、体積ベースで全体量の 45 % ともいわれ、木質材料として再利用する取り組みは、震災直後から始められている。しかし、再利用に適するまでの分別は困難で、その結果、多くの瓦礫は一次集積地における自然発火による燃焼や腐敗による悪臭発生の原因となっている。

木質瓦礫の処理法として最も現実的な方法は、燃焼処理である。しかし、海水由来の塩素を含んだ木質瓦礫からは、低温燃焼条件でダイオキシンの発生が危惧される。そのため、環境に配慮した処理を行うためには、速やかに、木質瓦礫への塩素残留の程度を調査する必要がある。

本研究では、木質瓦礫中の残留塩素量を測定する。これは、被災現場における残留塩素濃度経時変化に関する公式な調査データがない事を鑑み、これを調査する。さらに、燃焼処理ではない新規木質瓦礫処理法として、瓦礫減量化を目的としたコンポスト処理の可能性を調査する。調査法は以下の通りである。

(1)木質瓦礫中の塩素量調査

現地の瓦礫集積地より採集した木質瓦礫に含まれる塩素量を、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分析)を用いて測定する。現行では、火災の鎮火を塩水により行っている。本項目では、瓦礫の一次集積地における自然発火時に海水による消火を行った箇所と、海水をかけなかった箇所の塩素量の比較を行う。また海水を被った木質瓦礫から、降雨によりどの程度塩素が抜け出すかどうかを確認するために、人為的に海水をかけた木材を一定期間野外に置き、塩素量変化を同様に ICP-AES を用いて測定する。

(2)木質瓦礫処理のコンポスト処理法の可能性

塩素が残存している木質瓦礫でもダイオキシンの発生なく処理できる方法として、コンポスト(堆肥化)処理の可能性を探る。対象が木材というコンポスト処理に不適切な原料であることから、木材腐朽菌を種付けすることを前提とした処理を調査の対象とする。自然界に普遍的に存在している木材腐朽菌であり、リグニン分解の能力を持つ白色腐朽菌カワラタケ Trametes versicolor を主に使って実験を行う。実験室において木質瓦礫に腐朽菌を接種し、継時的な重量変化や形態変化を観察することで、堆肥化における残存塩素量の影響を評価する。JIS 規格の木材腐朽試験(JIS Z 2101)では、2 cm 角の木片を使って実験を行うが、本課題では、瓦礫のような大きなものについて木材腐朽菌がどの程度分解できるかを確認するために実瓦礫と同様の大きさの木片を使って実験を行う。

以上の人工環境下での実験とともに、木片(実瓦礫ではない通常のもの)の野外でのコンポスト処理の検討を行う。促進因子がなければ非現実的な長い時間がかかることが予想されるので、促進因子として上述の木材腐朽菌を使用し、重量変化などから瓦礫減量化の可能性を評価する。

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2012年7月27日作成

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