研究課題
安定炭素同位体と近赤外レーザー分光法を用いた樹木のCO2固定量の追跡
研究組織
代表者 | 檀浦正子 (京都大学農学研究科) |
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共同研究者 | 高橋けんし (京都大学生存圏研究所) 高梨聡 (独立行政法人森林総合研究所) 小南裕志 (独立行政法人森林総合研究所関西支所) |
研究概要
陸上生態系の中で、森林は主たる二酸化炭素の吸収源である。しかし森林を構成している樹木は、一方的に炭素を吸収し続けるわけではなく、光合成と同時に呼吸も行うため、その差し引き分が炭素として樹体に数十年にわたって蓄積されることになる。我が国は国土の 67 % を森林に覆われた森林国といわれているが、山間部の大規模開発や林業の荒廃、森林管理不足によって二酸化炭素の吸収能の低下が懸念されている。したがって、森林樹木の二酸化炭素の固定能およびその貯留メカニズムを正しく評価することは、社会的にも急務な課題となっている。また、気候変動や林分の変化による長期的な変動予測のためにも、炭素固定速度および固定量が森林のおかれた環境に対してどのように変動するかを明らかにすることは非常に重要な問題である。
本研究では、炭素安定同位体ラベリング手法を森林樹木に適用し、最新のレーザー同位体分光装置を用いて測定することによって、樹体に取り込まれた炭素が森林生態系をどのように滞留・循環し、放出されていくのかを精密に定量化することを目指す。とりわけ、炭素の蓄積量だけでなく、その炭素の移動速度や滞留時間を考慮して環境変動応答性を明らかにするという点で、新しい考え方を提唱するものである。本研究では、以下の疑問に答えることを目指す。
- 樹木が光合成として固定した炭素が、葉から根、土壌へ到達するのに要する時間は?
- 樹木が光合成として固定した炭素が、それぞれのコンパートメントに滞留する時間は?
- そしてこれらのパターンは樹種によって異なるのか?
本研究により、生態系炭素循環モデルの検証に重要となるパラメーターを与えることができるため、「どのような森林管理を行えば、我が国における森林の炭素固定能を永続的に最適化させることができるか?」という基本的な問いに対して、科学的根拠を示すことにつながる。
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2011年8月3日作成