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2009(平成21) 年度 生存圏科学 萌芽研究 5

更新日: 2017/09/22

研究課題

長期間継続する太陽活動度極小期が電離圏に与える影響の解明

研究組織

 代表者 齊藤昭則 (京都大学・理学研究科)
 共同研究者 衛 (京都大学・生存圏研究所)
津川卓也 (情報通信研究機構)

研究概要

今回の太陽活動度極小期について、現状の電離圏の観測を行い、それと併せて過去のデータとの比較を行う事により、長期間継続する太陽活動度極小期が電離圏に与える影響について明らかにする。

現在進行している太陽活動度極小期は、少なくとも電離圏観測が本格化した 1957 年の IGY 以降で最長のものである。2009 年 7 月時点で、移動平均した月間値の Sun Spot Number (SSN)が 10 以下となる期間が 2 年 3 ヶ月間継続しているが、これは前回の太陽活動度極小期である 1996 年 7 月付近の 9 ヶ月間や 4 つ前の 1964 年 9 月付近の 2 ヶ月間よりもはるかに長い。前々回の 1986 年 5 月付近、前々々回の 1976 年 5 月付近の極小期には移動平均した月間値 SSN が 10 より低くなることはなかった。

このような、長い継続期間の太陽活動度極小期における電離圏の観測はこれまでになく、その影響は明らかになっていない。本年、日本におけるスポラディック E 層の活動度は非常に高いが、これまでスポラディック E 層と太陽活動度の関係性は低いと考えられており、長期間継続する太陽活動度極小期の影響が現れている可能性がある。また、電離圏F領域に現れる中規模伝搬性電離圏擾乱及び中緯度 spread-F は低太陽活動度の方が活発であることが知られているが、今回の長期間継続するものと前回、あるいは前々回の極小期の違いは確かめられていない。さらに、IRI モデルなどの経験モデルはこれまでの短い太陽活動度極小期のデータに基づいているが、今回の極小期にも適用できるかどうかの評価はまだ充分されていない。基本的にIRIモデルなどで表現される大規模なプラズマ密度構造は 1 ヶ月以下の短い時定数で決められており、太陽活動度の極小期が長くても短くても同じ振る舞いをすると考えられているが、もし IRI モデルと現在の電離圏状態の間に違いが見られるならば、長い時定数を持つ物理機構が存在することを示している。このように、現在進行中の長期間継続する太陽活動度極小期が電離圏に与える影響は、その存在の有無を含めて、未解明の部分が多く、萌芽的、先端的な研究対象である。

齊藤昭則 20091954 年 4 月から 2009 年 7 月までの太陽黒点数。太陽活動度上昇期が重なるように太陽周期に分けて並べた。赤線が前回の太陽周期 23 とそれに続く極小期を表す。

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2009年10月6日作成

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