研究課題
2007(平成19)年度萌芽ミッションプロジェクト 5
熱帯雨林における生物起源揮発性有機炭素(BVOC)放出量の計測
研究組織
代表者 | 小杉緑子 (農学研究科) |
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共同研究者 | 東野達 (エネルギー科学研究科) 谷誠 (農学研究科) 中村卓司 (生存圏研究所) |
研究概要
IPCC 第 4 次評価報告書で温暖化の原因と断定された温室効果ガスの吸収源として、陸域生態系(特に森林)の果たす役割が期待されている。しかしながら、森林は CO2 の吸収源としての機能以外に、イソプレン、モノテルペンなどの生物起源揮発性有機化合物 (BVOC) を放出しており、その量は全球で年間 800 Tg (Seinfeld and Pandis) とメタンの発生量を凌ぐと推定されている。BVOC は大気中でオゾンやラジカルと短時間に反応して最終的には 1/2 程度が CO2 に変換され、その量は人間活動による CO2 排出量や炭素収支におけるミッシングシンクに対して無視できないとも指摘されている。
本研究の目的は、アジア熱帯雨林の葉群においてイソプレンをはじめとする BVOC の放出量を計測し、また同時に光合成過程や気象条件を観測することにより、その放出過程を明らかにすることである。特に高温かつ現存量の多い熱帯林における BVOC の放出量、放出過程、そのメカニズムについては、昨今世界的に注目されて始めているものの、観測例は圧倒的に少なく、本研究はその先駆的なものとなることが期待される。
植物がイソプレンを放出する生理学・生態学的理由としては、光合成の熱放散反応が関係しているとの報告がなされている (Sharkey) が、熱帯雨林における自然条件下での BVOC 放出の日変動・季節変動などについて、その詳細は明らかではない。これまでに得た温帯林における結果から熱帯林の環境条件を考慮すると、BVOC 放出量が温帯林よりも数倍であると推測され、その放出量および放出形態を計測することにより、気候や植生の違いによる BVOC 動態の違いにも着目し、熱帯林における BVOC 放出が地球環境問題や森林資源問題に与える影響を考察する予定である。
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2007年8月31日作成