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第562回生存圏シンポジウム
第5 回 福島県への支援取り組み及び放射線マッピング研究会

更新日: 2025/12/19

開催日時 2025/12/17(水曜日)
開催場所 オンライン(講演者のみ松島屋旅館 桃香)
申請代表者 谷垣 実(京都大学複合原子力科学研究所)
所内担当者 上田 義勝、杉山 暁史(生存圏研究所)
関連ミッション ミッション1 環境診断・循環機能制御
ミッション5 高品位生存圏
関連分野 生存圏科学、放射線工学、情報学、工学、植物科学、放射線計測学、社会学、土壌学

概要

生存圏研究所では、東日本大震災に関連する研究成果の共有を目的として、生存圏シンポジウムを平成23年度より毎年開催している。平成30年度以降は「福島県への支援取り組み及び放射線マッピング研究会」として名称を統一し、本年度で通算14回目の開催となった。令和7年度は、複合原子力科学研究所との共同により、第562回生存圏シンポジウムとして対面・オンライン併催で開催した。

目的と具体的な内容

本シンポジウムは、2011年3月の東日本大震災および原子力災害を契機として、福島県の現状、復旧・復興に向けた支援の取り組み、ならびに放射線計測・マッピング技術に関する研究成果を継続的に共有することを目的として開催している。これまでに計14回開催され、学術研究者、自治体関係者、企業技術者など多様な立場の参加者による議論の場として機能してきた。

 2025年度は、対面・オンライン併催という形式で実施し、放射線モニタリング技術、環境放射能評価、農林水産分野における放射性物質管理、ならびに復興政策・社会実装に関する幅広い講演が行われた。冒頭では、KURAMA/KURAMA-IIの開発とその社会実装について紹介がなされ、続いて自動車走行サーベイシステムASURAに関する測定結果や、スパースモデリングを用いた放射線源位置推定など、先端的な解析手法に関する研究成果が報告された。

 また、国際研究の自然放射能研究として、南極東部ルツォ・ホルム複合岩体におけるガンマ線計測と地球化学的解析に基づく研究発表が行われ、放射線計測技術の学術的広がりを示す内容となった。自治体からは、島根県原子力環境センターによる環境放射線監視システムやLPWA通信を用いたモニタリング体制の整備状況が報告され、実務的な取り組みについての知見が共有された。

 後半では、農地土壌中の放射性セシウム深度分布評価、福島県における農林水産物および森林環境の放射線モニタリング、玄米中の放射性セシウム濃度に関する継続調査結果など、福島県の現状に即した研究発表が行われた。さらに、福島イノベーション・コースト構想推進機構からは、復興知事業を含む取り組みと課題について説明があり、研究成果の社会実装や地域復興との連携について活発な議論がなされた。

 総合討論では、今後の復興支援のあり方や放射線計測・データ活用技術の高度化、研究と行政・地域社会との連携の重要性について意見交換が行われ、本シンポジウムの目的を改めて確認する機会となった。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

原子力災害に起因する放射性物質の拡散や環境影響は、専門的知識を要し、一般には理解が難しい課題を含んでいる。このような課題に対しては、継続的かつ信頼性の高い研究活動を積み重ねるとともに、得られた知見を社会に向けて丁寧に発信することが不可欠である。
 本研究会では、福島県を中心とした放射線モニタリングや農林水産分野の調査研究、計測技術の高度化に関する成果を継続的に発表してきた。これにより、生存圏科学コミュニティに対して、現地の正確な状況や科学的根拠に基づく評価を共有する役割を果たしている。また近年では、放射線計測技術を核としつつ、地球科学、情報解析、社会実装といった多分野を横断する発表が増加しており、学際的な研究交流の場としての意義も高まっている。
 さらに、オンライン開催を通じて地理的制約を超えた参加が可能となり、国内外の研究者・実務者が知見を共有する国際連携型の研究会としての機能も強化されている。これらの成果を踏まえ、本研究会を生存圏シンポジウムとして継続的に開催することは、生存圏科学の発展および関連コミュニティの形成に今後も大きく貢献するものと考えられる。

プログラム

13:00-13:05 開会挨拶 谷垣実 京都大学
13:05-13:25 KURAMA/KURAMA-IIの開発と展開 谷垣実 京都大学 座長(上田)
13:25-13:45 自動車走行サーベイシステム ASURA の調査結果などの紹介 2025 後藤淳 新潟大学
13:45-14:05 ASURA測定データに対するスパースモデリングによる放射線源位置推定の研究 小川拓海 新潟大学
14:05-14:25 Natural Radioactivity and Radiogenic Heat Production in the Lutzow-Holm Complex, East Antarctica: Insights from Gamma-Ray Spectrometry and Geochemistry. Devika Swapna Panicker 新潟大学
14:25-14:45 島根県原子力環境センターの監視情報システムに関する取り組み 田中孝典 島根県原子力環境センター
14:45-15:05 島根県環境放射線モニタリングにおけるLPWA通信の整備状況 加藤季晋 島根県原子力環境センター
15:05-15:20 休憩
15:20-15:40 TBA TBA 高知工科大 座長(谷垣)
15:40-16:00 福島県農業総合センターにおける農林水産物放射線モニタリングの取り組み 小野勇治 福島県農業総合センター
16:00-16:20 原発事故による福島県の森林・林業への影響と県によるモニタリングの取り組み 櫻井哲史 福島県農業総合センター
16:2016:40 福島県産玄米の放射性セシウム濃度 藤村恵人 農研機構
16:40-17:20 福島イノベーション・コースト構想の取組と課題について・復興知事業に関する説明 植木健司・安田吉紀 (公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構
17:20-17:55 総合討論(今後の復興支援や技術開発のあり方)
17:55-18:00 閉会挨拶 上田義勝 京都大学

会場風景

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2025年4月7日作成/12月19日更新

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