大気中の二酸化炭素を固定し利用するセルロースなどのバイオマスは、カーボンニュートラル2050に向けたCCU(Carbon Dioxide Capture and Utilization)技術の中心にある資源です。京都大学バイオナノマテリアル共同研究拠点では、昨年に引き続きバイオマス系材料について時代を先導する研究者が最もホットな成果を発表する機会を作りました。最新の情報を共有いただき、一緒になってバイオマス資源の先進的利用に取り組んでいただければ幸いです。
概要
国内の大学におけるセルロースおよびその類似多糖の研究の第一人者が集い、多くの参加者が関心を寄せているバイオナノマテリアルの社会実装に向けた最近の技術、取り組みについての研究を紹介した。
目的と具体的な内容
持続的に生産可能なバイオマス資源、バイオマテリアルは、自動車産業、家電産業、化学産業を始めとする様々な分野から高い関心が集まっている。樹木やタケの細胞、カニやエビの外殻、カイコが紡ぐ蚕糸は、人類の知恵をはるかに越えて作り出されている精緻なナノ構造とそれに由来する機能を有しているが、そのことは限られたコミュニティで知られているだけである。ナノ構造を有するバイオ素材、バイオナノマテリアルの最前線で活躍している大学や公的研究機関の研究者の活動が産業界や異なる材料分野において広く知られているとはいえない。バイオナノマテリアルに関する研究が、今、どのような方向に向かい、展開しているのか、昨年に引き続き、時代を先導する研究グループや研究者が最もホットな話題を発表する機会を作った。最近の情報を共有し、共にバイオマス資源の先進的利用に取り組むきっかけを作る。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
持続型資源に基づく大型産業資材として、ナノセルロース材料の製造や利用に興味を持つ、産官学の幅広い分野からの参加者があった。特に、産業界からの参加者が約8割を占め、分野も製紙産業、化学産業、繊維産業、住宅資材産業、食品産業、成形加工業、エレクトロニクスデバイス関連、商社など多岐にわたっていた。317名の参加登録があるなど、各方面からの注目度の高さが伺われ、本生存圏シンポジウムが、生存圏フラッグシップ共同研究として進めているバイオナノマテリアル関連のコミュニティ形成に大きく貢献していることがわかる。
プログラム
13:30 | 開会あいさつと趣旨説明 京都大学 生存圏研究所・伊福 伸介 |
13:40 – 15:00 | セッション1 |
1.細胞壁中の水素結合をいじることは可能か? ~エクスパンシンのセルロースに対する影響をFTIRで見る~ 今井 友也(Tomoya IMAI) 京都大学 生存圏研究所 |
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2.セルロースナノファイバーの結晶性と表面構造 大長 一帆 (Kazuho DAICHO) 東京大学大学院 工学系研究科 総合研究機構 |
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3.超精密3Dプリンタ及び足場材の開発 徐 淮中(Huaizhong XU) 京都工芸繊維大学 バイオベースマテリアル学専攻 |
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4.ナノファイバー化技術を用いた未利用資源の農業分野での利活用 上中 弘典(Hironori KAMINAKA) 鳥取大学 農学部 |
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質疑応答: セッション1 | |
15:00 | 休憩 |
15:15-16:35 | セッション2 |
5.固定化セルロースナノファイバーの界面機能設計(オンライン) 横田 慎吾(Shingo YOKOTA) 九州大学大学院 農学研究院 |
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6.セルロースナノファイバーシートの燃焼特性(オンライン) 足立幸司(Koji ADACHI) 秋田県立大学 木材高度加工研究所 |
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7.セルロースナノファイバーのレオロジー特性 田仲 玲奈 (Reina TANAKA) 森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
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8.キチンナノファイバーの創傷治癒効果? 伊福 伸介(Shinsuke IFUKU) 京都大学 生存圏研究所 |
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質疑応答: セッション2 | |
16:35 | 閉会のあいさつ 京都大学 生存圏研究所・矢野 浩之 |
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2024年9月10日作成/2025年1月15日更新