概要
生存圏研究所においては東日本大震災関連の研究報告を、生存圏シンポジウムとして2011年度から毎年開催している。今回も複合原子力科学研究所との共同で開催した。2021年度年度より、「福島県への支援取り組み及び放射線マッピング研究会」として名称を変更している。
目的と具体的な内容
2011年3月の東日本大震災に関するシンポジウムとして、これまで合計12回の生存圏シンポジウム「東日本大震災以降の福島県の現状及び支援の取り組みについて」を毎年開催し、これまでに総計758名の参加者があった。今年度は東京駅前の京都アカデミアフォーラムでの開催を、オンライン併催として開催した。また、2018年度より複合原子力科学研究所と共同開催してきているが、2021年度より「福島県への支援取り組み及び放射線マッピング研究会」として名称を統一し、名称統一後今回が3回目の開催となる。令和5年度は、継続研究としての成果を新潟大学、高知工科大学、福島大学から発表があった。また、生存圏シンポとしてのこれまでの開催状況を紹介し、過去12回のシンポジウムの内容をキーワード解析して今後のシンポジウム開催について議論を行った。企業からの参加や講演も多く、分野としても農学・工学・情報学・経済学的観点からの講演や議論が幅広く行われ、分野融合型のシンポジウムとして特色ある開催を2日間に渡り開催する事が出来た。その他、福島県で用いられてきた環境放射能計測技術を他府県でも利用されつつある事が報告され、将来の防災に向けたシステム開発研究についても紹介があった。令和5年度においてもデモ体験として、VRによるマッピングデータの実体験があった。参加者としては関連大学からの参加の他、企業からの参加、研究機関、都道府県自治体などからの参加もあり、オンライン参加も含めると58名の大変盛況な参加となった。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
生活圏を脅かす要因の一つとなりうる事故の中でも、原子力発電に関わるものに対しては、放射性物質の拡散など、一般に情報が中々得られない不安定な状況になりやすい。対策として唯一の方法は、地道な研究活動と一般への情報公開により、人類生存圏の安心・安全な社会を構築して行かなくてはならない。本研究集会では、これまで福島県の現状と復旧・復興に向けた支援研究の取り組みを継続して発表し、生存圏科学のコミュニティに現地の正しい情報を伝えることに取り組んできた。ここ数年は、福島復興だけではなく、日本全体における防災・減災をキーワードとした非常に幅広い分野からの発表も多く、国際融合・国際連携型の重要なシンポジウムとして開催できている。国内外への研究成果発表が行われている事からも、継続して生存圏シンポジウムとして開催する意義が高まってきている。
また、本研究集会に関連して、小中高校生を対象とした震災関連の出張授業も継続して開催している。
子どもの好奇心をくすぐる体験授業「出前・受入授業」, 東日本大震災に関する研究(福島県での復興支援研究), 京丹波町立瑞穂中学校(中学3年生 19人), 京都府, 2023/11/17
プログラム
2023年12月21日(木)
13:30 – 13:40 | 開会あいさつ | 上田 義勝 | 京都大学生存圏研究所 | |
13:40 – 14:10 | シンポジウムの10年間の講演の変遷 | 上田 義勝 | 京都大学生存圏研究所 | 座長:上田 |
14:10 – 14:25 | TBA | 松浦 隆弘 | 松浦電弘社 | 座長:上田 |
14:25 – 14:55 | 福島国際研究教育機構(F-REI)の概要と活動の紹介 | 青野 辰雄 | 福島国際研究教育機構(F-REI) 第5分野 放射生態学ユニット | 座長:上田 |
14:55 – 15:25 | 自動車走行サーベイシステム ASURA の調査結果などの紹介2023 | 後藤 淳 | 新潟大学研究統括機構 | 座長:上田 |
15:25 – 15:40 | 休憩 | |||
15:40 – 16:10 | 不十分なカリウム肥培管理における 玄米放射性セシウム濃度の推定 | 藤村 恵人 | 農研機構東北農業研究センター | 座長:百田 |
16:10 – 16:40 | (オンライン)福島国際研究教育機構での取り組みについて | 二瓶 直登 | 福島大学 食農学類 農業生産学コース | 座長:百田 |
16:40 – 17:10 | 福島県で発生した除去土壌の再生利用について ~再生利用に資する除去土壌の最新減容化技術開発~ | 日下 英史1, 辻本 宏2 | 1: 京都大学大学院エネルギー科学研究科 2: 鹿島建設株式会社 |
座長:百田 |
2023年12月22日(金)
9:45 -10:15 | (オンライン)成層圏トリチウム層の予言と大気圏ガンマ線モニタリングの可能性 | 水野 義之 | 関西外国語大学 | 座長:谷垣 |
10:15 -10:45 | 1FNPP事故に伴う実測データに関連した統計解析法の検討 | 熊澤 蕃1 豊田 亘博2 加藤 和明3 |
1: 元原研/原子力機構前身 2: 豊田放射線研 3: 洗練研 |
座長:谷垣 |
10:45 -11:15 | 島根県の環境放射線監視に関する開発・取り組み | 田中 孝典 | 島根県原子力環境センター | 座長:谷垣 |
11:15 -11:45 | 無線通信”ZETA”を備えたKURAMA-IIの原子力事業者モニタリングへの導入事例 | 五十嵐 悠 濱口 拓 前田 英太 山田 純也 武藤 保信 野原 尚史 |
日本原子力研究開発機構 大洗研究所 放射線管理部 環境監視線量計測課 | 座長:谷垣 |
11:45 -13:00 | 昼食 | |||
13:00 -13:30 | 圃場内の土壌中放射性Cs濃度の空間変動 | 錦織 達啓1 藤村 恵人1 山田大吾1 渋谷 岳1 江口 哲也1 久保 堅司1 矢内 純太2 |
1: 農研機構 東北農業研究センター 2: 京都府立大 |
座長: 藤村 |
13:30 -14:00 | 「水田土壌中の放射性セシウム深度分布とその推定技術;現状報告」 | 百田 佐多生 片山 晃承 |
高知工科大学 理工学群 | 座長: 藤村 |
14:00 -14:30 | 猿田川における放射性セシウムについて | 福田 美保 | 福島県環境創造センター研究部 | 座長: 藤村 |
14:30 -14:45 | 休憩 | |||
14:45 -15:15 | 大規模イベント等における核セキュリティ技術開発 | 高橋時音 | 日本原子力研究開発機構 | 座長:津田 |
15:15 -15:45 | アンフォールディング法を適用したin-situガンマ線スペクトル測定による福島県内家屋内外の空間線量率の評価 | 林 真照 | 三菱電機 | 座長:津田 |
15:45 -16:15 | KURAMA-IIの開発と展開の現状 | 谷垣 実 | 京都大学複合原子力科学研究所 | 座長:津田 |
16:15 | 閉会挨拶 | 谷垣 実 | 京都大学複合原子力科学研究所 |
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2023年4月5日作成/2023年12月25日更新