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第464回生存圏シンポジウム
バイオナノマテリアルシンポジウム2021 —アカデミアからの発信—

更新日: 2022/01/18

開催日時 2021(令和3)年12月21日(火)13:00–17:10
開催場所 オンライン配信(Zoom)
主催者 京都大学バイオナノマテリアル共同研究拠点(経済産業省Jイノベ拠点)、ナノセルロースジャパン
申請代表者 矢野浩之 (京都大学生存圏研究所生物機能材料分野)
関連ミッション ミッション4 循環材料・環境共生システム
関連分野 製紙、化学、高分子、木材・木質材料、成形加工、食品、繊維、エレクトロニクス、自動車、家電、住宅、流通に関わる分野。

Webサイト: バイオナノマテリアル共同研究拠点
https://www.rish.kyoto-u.ac.jp/bionanomat/

概要

国内の大学におけるセルロース研究の第一人者が集い、多くの参加者が関心を寄せているCNF材料の社会実装に向けた最近の技術、取り組み、さらに生物学的なアプローチについての研究を紹介した。

目的と具体的な内容

温室効果ガスゼロエミッションは、あらゆる分野において人類が生存を賭けて取り組む喫緊の課題である。大気中の二酸化炭素を吸収して生産される植物バイオマス資源は、ポスト化石資源の一番手に位置づけられ、持続可能なカーボンニュートラル素材として自動車産業、家電産業、化学産業を始めとする様々な分野から高い関心が集まっている。

樹木やタケの細胞、カニやエビの外殻、カイコが紡ぐ蚕糸は、人類の知恵をはるかに越えて作り出されている精緻なナノ構造とそれに由来する機能を有している。しかし、そのことは限られたコミュニティで共有されているに留まっている。ナノ構造を有するバイオ素材、バイオナノマテリアルの最前線で活躍している大学研究者の活動が産業界や異なる材料分野で広く知られているとはいえない。そこで高性能のセルロースナノファイバーやナノクリスタル、キチンナノファイバー等から構築されているバイオナノマテリアルに関する研究が、今、どのような方向に向かい、展開しているのか、時代を先導する研究グループや研究者が最もホットな話題を発表する機会を作った。本シンポジウムは、最近の情報を共有し、一緒になってバイオマス資源の先進的利用に取り組むきっかけとなる場を提供することを目的とする。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

持続型資源に基づく大型産業資材として、ナノセルロース材料の製造や利用に興味を持つ、産官学の幅広い分野からの参加者があった。特に、産業界からの参加者が約8割を占め、分野も製紙産業、化学産業、繊維産業、住宅資材産業、食品産業、成形加工業、エレクトロニクスデバイス関連、商社など多岐にわたっていた。

1000名を上回る参加登録、約800名の視聴者があるなど、各方面からの注目度の高さが伺われ、本生存圏シンポジウムが、生存圏フラッグシップ共同研究として進めているバイオナノマテリアル関連のコミュニティ形成に大きく貢献していることがわかる。

プログラム

13:00 趣旨説明と各グループの紹介:京都大学生存圏研究所 矢野浩之
13:10–14:15 セッション1

  1. 「CNFの結晶性は分散と会合が支配する」
    齋藤継之(東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻製紙科学研究室・准教授)
    CNFの結晶性は、分散により低下し、会合により回復する可逆的な性質であるという新奇現象を解説する。
  2. 「ナノセルロースに色素を混ぜてみたら、新しい定量法を発明できて学会でも受賞できちゃった話」
    荒木潤(信州大学繊維学部化学・材料学科・教授)
    トルイジンブルーO色素吸着を用いて、ナノセルロース試料の表面荷電基を迅速かつ簡便に定量する手法を考案した。
  3. 「ミクロ~マクロのデータが物語るバイオベースコンポジット+α」
    寺本好邦(京都大学大学院農学研究科森林科学専攻生物材料化学分野・准教授)
    バイオベースコンポジットの経験則を数値化するミクロな分析データと、マクロ物性の統計データがマッチングする様子を紹介する。バイオナノマテリアルのアプリケーションへのデータ活用の可能性についても触れる。

質疑応答:セッション1

14:15 休憩
14:25–15:50 セッション2

  1. 「想定外への挑戦 —CNF切り紙によるエレクトロニクス放熱—」
    上谷幸治郎(大阪大学産業科学研究所第2研究部門自然材料機能化研究分野・助教)
    CNFに見出された意外な熱伝導性をエレクトロニクスの冷却に適用することを目指し、切り紙構造と空気対流を組み合わせた新規な放熱機構を提案する。
  2. 「次世代京都プロセスと高耐衝撃材料の開発」
    矢野浩之(京都大学生存圏研究所生物機能材料分野・教授)
    CNF強化PP材料について次世代の製造プロセスと破壊までの仕事量が大きく向上した材料を紹介する。
  3. 「キチンナノファイバーによる非アルコール性脂肪肝炎の改善効果」
    伊福伸介(鳥取大学工学研究科化学・生物応用工学専攻・教授)
    キチンナノファイバーを服用すると腸内細菌叢が変化し、生体内の酸化ストレスを低下させることに伴い、非アルコール性脂肪肝炎に対して改善効果をもたらす。
  4. 「フィブロインナノファイバーのバイオマテリアルへの展開」
    岡久陽子(京都工芸繊維大学繊維学系バイオベースマテリアル学専攻バイオ機能材料研究室・准教授)
    繭の主成分であるフィブロインを機械的に解繊して得られるフィブロインナノファイバーの医療用材料への応用を目指した取り組みについて紹介する。

質疑応答:セッション2

15:50 休憩
16:00–17:05 セッション3

  1. 「木材を料理する」
    足立幸司(秋田県立大学木材高度加工研究所・准教授)
    木材加工と食材調理は、バイオマテリアルの加工技術として共通点が多く、交流を通じた新しい展開が期待される。今回は料理をキーワードとして取り組みを紹介する。
  2. 「セルロースの合成生物学への挑戦」
    今井友也(京都大学生存圏研究所マテリアルバイオロジー分野・教授)
    合成生物学とは、設計により生物現象を再構成する学問分野である。セルロースの合成生物学研究の価値について概説する。
  3. 「生態系材料學のスヽメ」
    北岡卓也(九州大学大学院農学研究院環境農学部門サスティナブル資源科学講座生物資源化学分野・教授)
    昨今のバイオナノマテリアル利用は、マイクロプラより環境に悪い。2050年のCO2排出実質ゼロに向け、Ecosystems Materialogyの概念を提唱する。

質疑応答:セッション3

17:05 閉会のあいさつ

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2021年10月21日作成,2022年1月18日更新

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