概要
本報告会は木質材料実験棟の共同利用研究における研究成果を発表することで、それぞれの研究テーマにおける深化および、他分野からの刺激を受けること、そして、研究の進め方やグループ作りなどについての意見交換を行うことを目的として例年開催されるもので、本年度は2020(令和2)年度に実施された22件の木質材料実験棟全国共同利用研究の成果発表が行われた。
目的と具体的な内容
令和2年度に実施された22件の木質材料実験棟全国共同利用研究の成果発表会を実施した。22件の報告内容の内訳は、木質構造に関するもの5件、木材の耐久性・保存に関するもの1件、木材の物性・化学処理に関するもの1件、炭素素材としての木質材料に関するもの4件、wallstatに関するもの11件である。木質材料実験棟が共同利用施設として開放している、鋼製反力枠、1000 kNアクチュエータ試験機、直パルス通電加熱装置およびSEM、ECO住などを活用した多彩な内容であった。一人当たり20分の持ち時間で発表が行われ、活発な議論がなされた。これら多岐に渡る内容を、発表者がお互いに理解度を上げられるように工夫された説明がされており、大変興味深い発表会となった。今後、分野間を超えた融合が起こることに期待したい。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
生存圏科学のうち、ミッション4「循環材料・環境共生システム」に関連する研究報告と、ミッション5-4「木づかいの科学による社会貢献」に関連する発表が為された。これらは高機能な炭素素材の開発と言った分子レベルの内容から、実大建築物での構造利用に関する応用的な内容まで多岐にわたった。再生産可能な生物資源である木質資源の有効活用は、「環境保全と調和した持続的社会の基盤となる先進的科学技術」を追求する生存圏科学と密接に関係する。今後これら生物資源がさらに様々な場面で活用される未来像に向けて、非常に有用な先進的な取り組みが報告されたと考える。
また、発表分野が幅広いことも本共同利用設備の特徴である。これら異分野の研究内容が一堂に会してディスカッションを行うことで、見方の異なった意見を得ることができ、相互に刺激があったと考える。
プログラム
13:00 | 開会挨拶 畑俊充(京都大学生存圏研究所) |
13:05 | 特異な形状のナノカーボンの生成 押田京一(長野工業高等専門学校) |
13:25 | 木質-藻類バイオマスを利用した炭素材料開発 木島正志(筑波大学数理物質系) |
13:45 | 大型木質面材の吸放湿性能とその構造性能へ及ぼす影響 黒塚ひとみ(広島大学大学院工学研究科) |
14:05 | 宇宙環境での木材利用を想定した木材細胞壁微細構造と含水率の関係 村田功二(京都大学大学院農学研究科) |
14:25 | バイオマス由来多孔質炭素材料の作製 坪田敏樹(九州工業大学大学院工学研究院物質工学専攻) |
14:45 | CO2吸蔵材製造に向けた木質炭素前駆体調製条件の検討 畑俊充(京都大学生存圏研究所) |
15:05 | 解析モデルによるCLT締付力の変動評価 若島嘉朗(富山県農林水産総合技術センター) |
15:25 | 住宅床下における銅板等の劣化抑制効果の検証 栗﨑宏(富山県農林水産総合技術センター木材研究所) |
15:45 | 木造住宅の地震時層崩壊を抑制する通し面材工法に関する研究 宮津裕次(東京理科大学理工学部建築学科) |
16:05 | 大径材の構造活用を目的とした高品質円柱の性能評価 北守顕久(大阪産業大学工学部) |
16:25 | 接着剤併用LSB接合部をもちいた柱脚モーメント抵抗接合部の開発 北守顕久(大阪産業大学工学部) |
16:45 | 耐震シミュレーションソフトwallstatの共同利用について 中川貴文(京都大学生存圏研究所) |
16:50 | 総括 京都大学生存圏研究所木質材料実験棟共同利用委員長 五十田博 |
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2020年11月25日作成,2021年3月9日更新