概要
本研究会は、太陽地球系物理学分野の研究者・学生、データ所有者、データベース・解析ツール開発者等が集まり、各々の研究の紹介・議論を通じて、各自の研究に最適な解析方法を見出すと共に、物理現象の理解、成果創出への最適な道筋を構築することを目的とする。また、当該分野で普及している複数の解析ツールを実際に用いたデータ解析講習会を開催し、学生・若手研究者が解析手法や解析ツールの利用方法を実践的に学べる場を提供する。
目的と具体的な内容
今年度も昨年度と同様に、9月28~30日の期間に関連した「MTI研究集会」、「STE現象報告会」、「宇宙空間からの地球超高層大気観測に関する研究会」の3つの研究集会と合同でオンライン開催した。我々の研究集会では、合同研究集会の参加者が主に利用している太陽地球系物理学分野のデータ解析手法・ツールに焦点を当てて講演・議論をし、各自が直面している課題の解決や最適な解析方法・研究フローの構築、高度な研究成果の創出に繋げることで、高い相乗効果を得ることを狙った。
9月29日午後には、太陽地球系物理学分野で広く利用されているデータ解析ソフトウェアであるIDL、MATLAB、及び、IDLをベースとした超高層大気データの統合解析ツール「SPEDAS」の講習セッションを並行開催し、学生、若手研究者計32名が参加した。IDL講習では、Harris Geospatial株式会社の現役エンジニアの方に講習を依頼し、IDLの基礎的な使い方だけでなく、中上級者向けの情報も提供していただいた。講習は、主に参加者の質問に対して回答していくQ&A形式で進められ、プログラミングの基礎から応用、各自の研究テーマに応じた解析方法等、幅広く質問があった。
9月30日には、口頭セッションが開催され、47名が参加者した。午前中に、大学院生を中心に4件の招待講演が行われ、午後は、初めての試みとして議論セッションを実施した。議論セッションでは、修士の学生11名に初めに約5分の研究紹介をしていただき、その後4つの小部屋に分かれて約1時間その研究テーマに関して議論した。
各小部屋には、進行役のアドバイザーと議論を正しく誘導するファシリテータを付け、各研究課題の解決に向けた議論を行った。本セッションには多くの研究者、学生の参加があり、非常に活発に議論が行われ、参加者から高い評価を得た。特に、学生が多くの参加者との議論を通じて各自の研究課題の行き詰まっている問題に対して解決策を発見できたこと、及び、コロナ禍で他機関の研究者との議論が困難な状況の中、多様な研究者と自由に議論、コミュニケーションできる場を提供できたこと等が高い評価を受けた。
なお、本研究集会で利用したデータ解析講習資料はIUGONETウェブサイトで公開している(http://www.iugonet.org/workshop/20200929)。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
本合同研究集会の参加者の多くは、人類の生存環境である大気圏と宇宙圏との境界にある超高層大気を研究している学生や研究者であり、この領域は生存圏研究所が推進している「環境診断・循環機能制御」と「宇宙生存環境」のミッションに密接に関連している。本研究集会では、これらの領域で一般的に利用されている解析手法、ツールに焦点を絞った。これにより、研究成果の高度化、領域を跨ぐ共同研究への発展に繋がることが期待される。
また、9月29日午後に開催したデータ解析講習では、本分野で広く利用されている解析ソフトウェアIDL、MATLAB、並びに、京大生存圏研究所も参加している大学間連携プロジェクト「IUGONET」により開発された解析ツール「SPEDAS」を実際に活用したデータ解析を実施し、学生、若手研究者の育成に貢献できた。これらのツールは、生存圏データベースに登録されている信楽MUレーダーや赤道大気レーダーを含む、超高層大気データの総合解析に広く利用されており、日本のみならず、インドネシアやマレーシア、インド等の学生、研究者によるデータ利用の促進、共同研究の発展に貢献するものである。また、これらのツールや解析手法は、将来的に、生存圏研究所が主導している日本学術会議の学術大型研究計画に関するマスタープラン2014・2017・2020の「太陽地球系結合過程の研究基盤形成」で取得される観測データの解析にも利用可能である。本研究集会を通じて得られた参加者からの要望を取り入れ、解析手法・ツールの開発・改良や人材育成を行うことで、生存圏科学の発展やコミュニティ形成へ貢献していく計画である。
プログラム
9月29日(火)
データ解析講習セッション(パラレル) | |
15:30–17:30 |
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9月30日(水)
セッション1 | |
10:55–11:00 | 趣旨説明 田中良昌(極地研) |
【座長:田中良昌(極地研)】 | |
11:00–11:15 | 大型大気レーダーを中心とする研究プロジェクトとその方向性 〇山本衛(京大生存研) |
11:15–11:30 | 磁気嵐時における全球電離圏変動の特徴及びその発生機構を解明するために(観測データ解析方法) 〇惣宇利卓弥(名大ISEE) |
11:30–11:45 | あらせ衛星ー地上光学同時観測に基づく磁気赤道面プラズマ波動と脈動オーロラの相互相関解析 〇吹澤瑞貴(東北大)、坂野井健、三好由純、細川敬祐、塩川和夫、加藤雄人、風間洋一、熊本篤志、土屋史紀、宮下幸長、田中良昌、笠原禎也、尾崎光紀、松岡彩子、松田昇也、疋島充、大山伸一郎、小川泰信、栗田怜、藤井良一 |
11:45–12:00 | 機械学習を用いた太陽黒点分類機の開発 〇木原孝輔(京大) |
12:00–13:00 | 昼休み |
セッション2 【座長:梅村宜生(名大ISEE)】 |
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13:00–13:20 |
研究紹介(各5分)
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13:25–14:20 |
小部屋に分かれてディスカッション(パラレル)
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セッション3 【座長:阿部修司(九州大)】 |
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14:30–14:50 |
研究紹介(各5分)
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14:55–15:50 |
小部屋に分かれてディスカッション(パラレル)
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セッション4 【座長:新堀淳樹(名大ISEE)】 |
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16:00–16:15 |
研究紹介(各5分)
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16:20–17:15 |
小部屋に分かれてディスカッション(パラレル)
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2020年7月22日作成,2020年12月22日更新