目的と具体的な内容
2007(平成19)年1月に施行された観光立国推進基本法や2012(平成24)年3月30日閣議決定された観光立国推進基本計画など、我が国は観光産業の活性化に向けた取り組みを強化中であり、今後も継続されることが確実視されている。また、我が国は多数の世界遺産・国宝・文化財建造物等が存在するなど、良質な観光資源にも恵まれている。しかしながら、国際観光機関が発表する国際観光客到着数(2014年)は世界27位(約1000万人)と低く、1位のフランス(約8500万人)に大きな差を有する。本研究集会では、観光資源となりうる文化財建造物(木造)を良質な状態で保ち、後生に伝えていくことで観光産業を更に活性化し、より大きな経済効果を生むことに着目したものである。
研究集会では先ず、奈良女子大学教授・宗教法人平等院代表の宮城先生から「文化財の保全再生と地域活性化」、文化庁文化財部参事官付の西川氏から「文化財建造物の活用と耐震対策」、京都大学教授の藤井先生から「文化財建造物の劣化特性、診断と耐久性評価」、文化財建造物保存技術協会の津和氏から「文化財建造物の改修工事」という題目で講演をいただいた。文化財建造物を使い続けることの意義や地域のランドマークとして提供することの大切さ、使い続けられるようにするためのルールの整備や展開、維持管理や保存方法、そして修復という、すべての活動について紹介があった。その後、ディスカッションでは、今後どのように文化財建造物を守り、活用していくのかについて議論があり、大変盛況であったために、時間超過しての終了となった。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
本研究集会は、文化財建造物の維持・保存・修復、またその規則の理解と、観光などの目玉としてのランドマークとしての活用、というあまり一緒に語られていないものについて、解説し、議論することで生活圏の捉え方を個別的でなく、より広がりを持つものとして考える機会を得るものである。そのため、今まで個別的に建物一個の性能について議論してきたものが、広い視野で考え、評価・理解することにつながるものと考えている。京都地域には、多くの文化財建造物があり、この維持・保全・修復において必要な検討項目や課題が見えることで、今後の企業との連携につながるのではないか、また京都のみならず、他地域からの参加もみられたため、より広い範囲で、本問題について興味を持っている学生や他大学の研究者、企業などの新しい連携に貢献したと考える。
特記事項
午前中に平等院の改修の紹介などの見学会を実施した。シンポジウム終了後、討論会を実施した。次の日にまとめ作業をおこなった。
プログラム
司会 瀧野敦夫(奈良女子大学・講師) | |
13:30–13:40 | 開会挨拶 清水秀丸(富山県農林水産総合技術センター木材研究所) |
13:40–14:30 | 文化財の保全再生と地域活性化 宮城俊作(奈良女子大学・教授/宗教法人・平等院) |
14:30–15:20 | 文化財建造物の活用と耐震対策 西川英佑(文化庁文化財部参事官付(建造物担当)) |
15:20–15:30 | 休憩 |
15:30–16:20 | 文化財建造物の劣化特性、診断と耐久性評価 藤井義久(京都大学・教授) |
16:20–17:10 | 文化財建造物の改修工事 津和佑子(公益財団法人文化財建造物保存技術協会) |
17:10–17:30 | ディスカッション コーディネータ 清水秀丸、瀧野敦夫 パネラー 宮城俊作、西川英佑、藤井義久、津和祐子 |
17:30 | まとめの挨拶 清水秀丸 |
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2015年11月5日作成,2015年12月28日更新