http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/ICS-12/index.html
目的と具体的な内容
地球の磁気圏は太陽風からエネルギーを取り込み、それを尾部の領域に磁気エネルギーという形で蓄える。しかし、それが過剰に蓄積されると、あることを契機に爆発的に解放し、そのエネルギーが電子・イオンの加速や、極域における激しいオーロラ活動、および、それに伴う電離圏・熱圏のジュール加熱の形に費やされる。この現象はサブストームと呼ばれていて、磁気嵐と並んで地球周辺の宇宙空間の擾乱現象として最も基本的かつ重要な現象であるが、その発生機構やエネルギー収支については、まだ、多くの未解明の問題が残されている。国際サブストーム会議(ICS)は、このサブストームの物理機構を集中的に研究する会合として、1992 年以来、2 年おきに関連各国で開催されてきたが、最前線で活躍する世界中の研究者が一堂に会するこの研究集会は、サブストーム研究において国際的に重要な位置を占める。2014 年はサブストームの発見以来 50 周年にあたる年であり、本国際会議では、サブストームの発見者である赤祖父俊一博士、サブストームを探査する米国 THEMIS 衛星の責任者である UCLA の Angelopoulos 教授、及び内部磁気圏を探査する米国 RBSP 衛星の担当者であるコロラド大学の Baker 教授の3名による基調講演をはじめとして、サブストームに関連して、特に近年、研究が進んでいる磁気圏尾部と内部磁気圏との結合過程を中心とした議論が展開された。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
地球を取り巻く宇宙環境の研究は、今後、未来に向けて人類が、その領域で活動を展開してゆく上で極めて重要である。今回の研究会のテーマであるサブストームは、1日に数回、1時間程度の時間スケールで発生する現象で、地球の磁気圏尾部から内部磁気圏に高温の電子とイオンを輸送し、さらに、その際、それらの粒子を加速したり、引き続いて起こる内部磁気圏の断熱的・非断熱的な粒子加速による放射線帯の発達、電離圏への高エネルギー粒子の降下を引き起こしたりすることが知られている。前者は衛星の帯電とそれが原因となって発生する放電事故、また、後者は放射線による電子素子の誤動作や破壊、宇宙飛行士や航空機搭乗者の放射線被爆を未然に防ぐ観点から重要である。それらを、より正確に予測するための宇宙天気予報の精度向上という観点からもサブストームの特性と発生・発達の物理メカニズムを解明することが急務である。
プログラム
日程
2014年11月10日(月): 午前: opening, 基調講演1、午後: 通常講演、夕方:ポスター講演1
2014年11月11日(火): 基調講演2、通常講演、夕方: 赤祖父博士によるevening talk
2014年11月12日(水): 基調講演3、通常講演、午後: エクスカーション、夜:公式晩餐会
2014年11月13日(木): 通常講演、夕方:ポスター講演2
2014年11月14日(金): 通常講演
講演・セッション題目
3名の基調講演者と内容は以下の通り。
- 赤祖父俊一 (アラスカ大学)): Why does the aurora flare up?
- Vasillis Angelopoulos (UCLA): Magnetospheric substorms as revealed by recent multi-spacecraft observations
- Daniel Baker (コロラド大学): The role of substorms in radiation belt particle enhancements
通常講演のセッションは以下の8つのセッションを行った。
- The role of substorm in geospace energetics
- The role of MHD and kinetic instabilities in substorms
- Substorm-related processes in the tail
- ULF/ELF/VLF waves
- Storm-substorm relationship
- Interaction between the tail and the inner magnetosphere and ionosphere
- Non-Earth substorm-like features
- Substorm currents and its dynamics
ポスターセッションの時間をとり、ポスター講演をおこなった。ポスター会場は講演会場とは別に確保してあり、大会期間中はポスターを継続的に展示できるようにした。