聴講希望の方は、下記Zoom参加登録用Googleフォーム・アドレスからご登録ください。
https://forms.gle/tGq3PD28EWFyDnYU6
ご登録ができない方は、ご所属、お名前、連絡先等記してメールにてお問い合わせください。
オープンセミナー事務局: openseminar@rish.kyoto-u.ac.jp
開催日当日午前10時までにご連絡ください。
要旨
ジャガイモの塊茎デンプンは食用から工業用まで幅広く利用されており、デンプンの品質改良はジャガイモ育種において重要な課題である。ジャガイモは栄養生殖性が強く、4倍体ゲノムを有する。そのため、新たなデンプン形質を有する品種を従来の交配育種法で作出することは容易でない。そこで、ゲノム編集技術により有用なデンプン形質を有する変異体系統の作出を試みた。
これまでに、翻訳エンハンサーdMac3を利用した改良型ゲノム編集ツール(CRISPR/dMac3-Cas9)が開発されており、これにより高頻度で変異体を得られることが分かっている。そこで、CRISPR/dMac3-Cas9システムを用いて、ジャガイモのデンプン形質の決定に大きく関わると考えられる3つの遺伝子のゲノム編集を行った。具体的には、ジャガイモ塊茎の貯蔵デンプン生合成に関わるデンプン顆粒結合型デンプン合成酵素GBSS遺伝子とデンプン枝付け酵素SBE3遺伝子、デンプンのリン酸化に関わるglucan-water-dikinase(GWD1)遺伝子である。これによって多数の変異体が得られた。変異体の表現型を観察したところ、これらの変異体の塊茎はこれまでにない新規なデンプン形質を有することが分かった。
ゲノム編集によって得られた植物体には、多くの場合CRISPR/Cas9などの外来遺伝子が残存する。これらは交配によって後代で分離するため、外来遺伝子のないヌルセグリガント変異体を得ることができる。しかしながら、栄養生殖性が強いジャガイモでは交配によって後代を得ることが困難である。そこで、トマトを台木とした接ぎ木個体を作製し、これらを交配することにより、ヌルセグリガント変異体後代を獲得する手法を確立した。
これらの結果は、CRISPR/dMac3-Cas9システムにより高効率で変異体が得られることや、変異体の接ぎ木個体を用いた交配システムを用いることで、従来法よりも容易にジャガイモ塊茎デンプンの代謝工学が可能であることを示す。また、これらの技術は、栄養生殖性の強い作物にも応用が可能であり、農作物の育種の促進に貢献できる可能性が考察される。
本セミナーでは、ゲノム編集を用いた新たなジャガイモ変異体の作出法および新たなジャガイモ交配法について紹介する。
図1:接ぎ木の様子とジャガイモ果実。接ぎ木により結実率が大幅に向上した。
印刷用PDFファイル(100 465 バイト) | ページ先頭へもどる
2022年11月10日作成