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第288回定例オープンセミナー
用材観から紐解く文化人類学的諸相 ~人類と木とのあわい~

更新日: 2022/09/28

開催日時 2022(令和4)年10月19日(水) 12:30–13:20
開催場所 オンライン(Zoom)
発表者 田鶴寿弥子(京都大学生存圏研究所・講師)
関連ミッション ミッション5 高品位生存圏

聴講希望の方は、下記Zoom参加登録用Googleフォーム・アドレスからご登録ください。
https://forms.gle/JAE391ZevtkXGMQH9
ご登録ができない方は、ご所属、お名前、連絡先等記してメールにてお問い合わせください。
オープンセミナー事務局: openseminar@rish.kyoto-u.ac.jp
開催日当日午前10時までにご連絡ください。

要旨

木材を利用し、膨大な数の文物を作り文化を花開かせてきた人類。仏像や建造物に代表され今に伝わる木製文化財の科学的調査からは、樹種や年代など様々な情報が得られます。それらの情報の一つ一つは、材料や時代を映し出すだけと考えられがちですが、地道にデータを蓄積していくことで、古代人が木と密接に寄り添い語り合ってきた当時の諸相、すなわち人類と木とのあわいを紐解くために重要な知見が見えてきます。

例えば、なぜ日本では8世紀の木彫像にカヤが多用されたのか、なぜ日本と中国の仏像に使用されている樹種が異なるのか、なぜ古墳に使われたコウヤマキが茶室にも使われているのか?これらの問いに答えをだすため、様々な学際領域の研究者たちと手をとりあって、多角的に研究を進めてきています。

たかが樹種、されど樹種です。適所適材の木材利用がなければこれほど豊かな現代文明は確立していなかったでしょう。ものづくりにおいて樹種により異なる加工性や強度という物性はもちろん重視されたはずですが、今以上に天災や疫病に脅かされていたであろう当時の人々にとって、木への信仰は今以上に強かったと想像できます。人々が樹木に対してもっていた崇拝心、精神性、民俗性、それを審らかにすることで、これまで見えていなかった歴史や文化の一側面の解明に貢献できると期待されます。

木を中心に考える文化交流、民俗学的視座にたった用材選択の考究などから見えてくる古代の用材観には、未来を生きる人々へ伝えていくべき、人と木とのあわいにあったはずの大事な精神的つながりが見え隠れします。人類の歴史の形成に木が欠かせなかったのと同様に、たとえどれだけ今後社会が発展し豊かになろうとも、木は文明形成に欠かせない存在であり続けるはずです。資源や環境問題がより重大な局面を迎えつつある今こそ、木と人とのあわいを改めて考える時期なのかもしれません。

本講演では、ボストン美術館やクリーブランド美術館など欧米の複数の美術館、博物館、大学などと行ってきた、中国および日本の木彫像調査から見えてきた古代の用材観の文化人類学的諸相、そして現在注力している研究などをご紹介しながら、みなさんと一緒に古の世界へタイムスリップし、人と木とのあわいを考えてみたいと思います。

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2022年9月28日作成

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