要旨
人類の産業活動の増大により、我々が棲息する空間(圏)には大きな変化が生じてきている。例えば、地球温暖化や輸送手段の広域・高速化により、人畜に有害な病原体が広汎かつ迅速に伝播していることは大きな社会問題の一つとなっている。本研究では、再生産可能な木質・森林バイオマスの変換により人類の生産活動に有用な物質を生産するという新しい研究領域を開拓することを目的とし、木竹酢液の抗ウイルス活性について検討を進めている。木竹酢液は、木竹炭を製造する際に副次的に得られ、殺菌をはじめとする様々な生理活性成分を含有することが知られており、ウイルスなどの病原体の駆除にも有用なバイオマスとして高いポテンシャルを有すると考えられる。現在、昨年日本において猛威をふるった口蹄疫ウイルスなどに対する消毒薬を木竹酢液から生産することを視野に入れ、口蹄疫ウイルスと同じピコルナウイルス科の encephalomyocarditis virus (EMCV)を主に用いて木竹酢液の抗ウイルス活性を評価している。講演では、木竹酢液成分の分析、培養細胞を用いた毒性試験、抗ウイルス活性試験の結果を基に、木竹酢液の生理活性物質としての可能性を議論したい。これら一連の研究は、本学ウイルス研究所や秋田県立大などの他研究機関と連携して進めている。
図 1 木酢液の生産工程の概要例 (日本木酢液協会HPより引用転載)
図 2 木酢液の抗ウイルス活性試験のスキーム