要旨
地球大気の組成のほとんどは窒素と酸素である。しかし、地球温暖化や成層圏オゾン破壊、対流圏オキシダントの発生といった、生存圏で起こっている環境変動 は、混合比にしてわずか 1 % にも満たない「微量成分」が中心的な役割を担っている。例えば、重要な温室効果気体である CO2 の対流圏におけるグローバルな平均混合比はわずか 370 ppm (0.037 %) 程度である。大気微量成分には、自然起源あるいは人為起源で放出される一次成分と、太陽光やラジカル種の存在下で大気中で生成される二次成分がある。自然 起源あるいは人為起源で放出された微量成分の量的・質的な変化を明らかにすることは、環境変動の仕組みを理解し、将来の変動を精密に予測するためには不可 欠である。
発表では、著者が進めている大気微量成分の濃度を精密にフィールド計測するための超高感度装置の開発や、大気微量成分の大気中での変質過程を明らかにする ためのラボ実験システムの開発について紹介する。特に、分子が光を吸収したり発光したりする性質を利用した「光計測」による測定器開発・ラボ実験を行って おり、そこではレーザーが重要なツールになっている。レーザーキャビティーリングダウン法や真空紫外レーザー誘起蛍光分光法などを用いた最近の研究につい て、いくつかのトピックスを紹介する。


