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第19回(2005年度第11回)定例オープンセミナー資料

更新日: 2015/09/10

開催日時 2005/12/14(水曜日)
題目 植物を用いた内分泌攪乱物質の環境浄化
発表者 廣岡孝志 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)
共同研究者 矢崎一史 (京都大学生存圏研究所)

要旨

内分泌攪乱物質は非常に低い濃度で人や生態系へ影響を与えることが疑われている物質である。これらの多くは、自然界における分解作用に対して高い抵抗性を有していることから、環境中に長期間残留し、生態系に対し多大な悪影響を与えることが懸念されている。従って、これらの環境浄化技術の開発は、人の健康を守るだけでなく生態系の保全においても重要な課題である。

環境からの内分泌攪乱物質の除去法として植物を利用した浄化技術 “phytoremediation” が注目されている。植物による汚染サイトからの有害物質の除去は、主として根を介した吸収により行われる。従って、植物の根と有害物質との相互作用を理解することは、phytoremediation 技術開発に重要である。最近になり、植物の生育を促進する根圏微生物群 (Plant Growth-Promoting Rhizobacteria) の利用が注目されつつある。これらの微生物は、植物根から分泌される有機物質を炭素源として利用する代わりに、植物に対して微量元素の取り込み促進や種々の環境ストレスへの耐性向上などの恩恵を与えている。まず、植物とその生育を促進する根圏微生物群との相互作用を利用した内分泌攪乱物質の環境浄化技術について研究を行ってきた。

一方、植物の中には、脂溶性の二次代謝産物を根の表面に蓄積するものがある。一般に環境中に残留する内分泌攪乱物質の多くは脂溶性を持つ。従って、根表面に脂質を蓄積する植物は、これらの内分泌攪乱物質を土壌環境から効率的に体内に吸収できる可能性があると考えられる。しかし、これらの二次代謝産物が、植物の根による内分泌攪乱物質の吸収に与える影響についての知見は少ない。森林圏遺伝子統御分野では、根に脂溶性の二次代謝産物であるシコニンを蓄積する植物であるムラサキからの毛状根の誘導作成とその培養技術がすでに確立されている。そこで、シコニンを分泌するムラサキ毛状根を植物根モデルとして、根に蓄積される脂溶性の二次代謝産物がその内分泌攪乱物質処理に与える効果についても研究を行った。

今回のセミナーでは、後者の研究テーマ“ムラサキ毛状根をモデルとした脂質生産性植物による内分泌攪乱物質除去の技術”を中心に現在までの研究結果と今後の方針について報告する。

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