要旨
植物を用いて、環境汚染を修復する手法をファイトレメディエーションと呼んでいる。本研究では、ファイトレメディエーションの材料としてこれまであまり注 目されてこなかった、重金属蓄積性樹木のヤナギを研究材料に用い、その金属蓄積機構を解明し、土壌の浄化技術を開発する。木本植物の植物体内での金属の動 態や、金属耐性や蓄積性、輸送をつかさどっている遺伝子などについては、現在のところ草本植物ほど研究が進んでいない。これらの基礎的な知見は、有用な樹 木の分子育種や、将来的に形質転換体を用いてファイトレメディエーションを遂行する際に有用な情報になると考えられる。
また、重金属蓄積植物の機構の解明には、分子生物学的手法とともに、各種の金属微量分析法や放射光化学を含めた物理化学的な手法の適用が有効だが、この全 く異なる2種の解析法を併用した研究例は少ない。本セミナーでは、現在進めているヤナギに関する研究の進捗と、分子生物学と放射光化学を併用して、植物の 重金属ストレス応答機構を明らかにしようとする演者の試みについて紹介する。