Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2018(平成30) 年度 生存圏科学 ミッション研究 24

研究課題

構造均一化リグニンの酸化分解の特性と糖尿病モデル動物を用いた生理活性評価

研究組織

 代表者 三亀啓吾(新潟大学農学部)
 共同研究者 渡辺隆司(京都大学生存圏研究所
久保井友夏梨(新潟大学農学部)
伸(青森県立保健大学)
Li Ruibo(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

研究目的

近年、植物由来の洗剤やエネルギーなどの脂肪族石油代替原料化は実現されている。しかし、植物由来の芳香族化学原料化は進展していない。この芳香族代替原料となりうるのが、植物資源に約30 %含まれるリグニンと言われている。しかし、リグニンは複雑な3次元状網目構造を形成しているためその分解は非常に困難であり、得られる分解物は多種多様である。このため均一性が重要視される現在の化学工業においては利用困難である。リグニンを有効利用するためには、分解物の均一化と高付加価値化が重要である。申請者はこれまで天然リグニンの相分離処理、続くアルカリ処理による2量体の選択的生産とリグニンの酸化分解による長波長UV吸収2量体の生産を行ってきた。

昨年度のミッション研究では、天然リグニンの相分離処理、続くアルカリ酸化銅分解を行い、モノマーから2量体リグニン分解物を含む水溶性画分と2量体から5量体を含む水不溶性画分を得た。これらの画分の抗酸化活性を測定した結果、水不溶性画分は、カテキン相当の抗酸化性を示した。

しかし、最適条件検討や分解物の構造解析が必要であり、本年度は引き続きこれらの条件検討と大量生産を行い、動物実験を含めた生理活性試験を行う。本研究では、酸化ストレスや慢性炎症が亢進している糖尿病などの予防・改善を見据えて、糖尿病モデル動物を用いて本分解物の生理活性の有無ならびに作用機序を検討して、医薬品原料など高付加価値用途開発を目指す。本研究は、再生可能な有機資源の木質バイオマスから生理活性物質を生産する新規反応を開発することにより、バイオマスの高付加価値利用を促進し、植物資源の循環利用と健康貢献を通して持続的な生存圏の構築に寄与する。

研究計画

(1)構造均一化リグニンの酸化分解によるリグニンオリゴマーの選択的な誘導

  • 相分離系変換処理により得られるリグノフェノール(LP)を酸化銅分解する。
  • LPアルカリ分解物の主成分であるアリールクマラン(Fig. 1)が従来の酸化銅分解条件下で安定であったことから、クマラン環の開環などの検討を行い、長共役系化合物の変換を行う。

(2)リグニン酸化分解オリゴマーの最適条件と構造解析

長波長UV吸収および抗酸化活性を有したリグニン酸化分解オリゴマー生成最適条件の確立と構造解析を行う。

(3)リグニン酸化分解オリゴマーの生理活性

  • リグニンオリゴマーの抗酸化活性を測定する。
  • (2)で確立した最適条件で長波長UV吸収および抗酸化活性を有したリグニン分解物の大量合成を行う。
  • 糖尿病モデルラット糖尿病改善効果などの生理活性試験を行う。

研究方法

リグニンを有効利用するためには、分解物の均一化と高付加価値化が重要である。昨年度より天然リグニンを相分離変換法によりβ-O-4結合を中心としたリグノフェノール(LP)を酸化銅分解することによりFig. 2のような長波長UV吸収リグニン分解物を選択的に高収率で得ること目的として進めてきたが、LP酸化銅分解物の2量体画分は酸化剤なしのLPのアルカリ処理で得られるアリールクマランが多く含まれ、酸化反応による芳香核-側鎖共役化はあまり見られなかった。本年度は、クマラン環の開裂処理などを行うことにより芳香核-側鎖共役構造を有する2量体の選択的生産を行う。

長波長UV吸収および抗酸化活性を有したLPアルカリ分解物2~5量体は、まだフラクションレベルの特性評価であり、それぞれの構造特性との関係を調べるため、オリゴマーの単離と構造解析を行う。この水不溶性画分は、分子量500–1000程度であり、皮膚吸収性が低いことから化粧品用の紫外線吸収剤として期待できる。これらの分解物生成最適条件の確立後、分解物のDPPHラジカル消去活性法などによる抗酸化活性試験により候補化合物の選定を行う。候補化合物を大量合成し、糖尿病改善効果などのラット等を用いた生理活性試験を行う。具体的には、具体的には、わが国で増加しつつある非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に及ぼすLPアルカリ酸化分解物の影響を疾患モデルマウスを用いて検討する。すなわち、NASHの発症や進展に関与するインスリン抵抗性、酸化ストレス並びに炎症をLPアルカリ酸化分解物が抑制するかを調べる。これにより、リグニンの新しい生理調節機能を見出すとともに、木質バイオマスの再資源化の1つの方法を提案する。

三亀啓吾: 2018(平成30)年度生存圏ミッション研究 図 1Fig. 1 LPアルカリ分解物の主成分

三亀啓吾: 2018(平成30)年度生存圏ミッション研究 図 2Fig. 2 広葉樹リグニンの酸化分解物中の長波長UV吸収新規化合物

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2018年8月1日作成

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