研究課題
土壌中の植物病原菌密度測定システムの改善と菌密度低減技術の開発
研究組織
代表者 | 辻元人(京都府立大学生命環境科学研究科) |
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共同研究者 | 小野愛(京都府京都乙訓農業改良普及センター) 杉山暁史(京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
京都府で生産される食用ナバナは特に「花菜」と呼ばれ、「京のブランド産品」の一つとして生産振興が図られている。府内南部地域を中心に約30ヘクタールの圃場で栽培が行われているが、古くから根こぶ病による被害が問題となっている。その防除対策の一つとして抵抗性品種の作付けが奨励され、一定の成果を上げてはいたが、近年、抵抗性を打破した根こぶ病菌が出現し、その被害が深刻化している。
根こぶ病は絶対寄生性の原生生物病原体Plasmodiophora brassicaeによって引き起こされる土壌伝染性の病害である。本菌はハクサイ、キャベツをはじめ、カブ、ブロッコリー、ナバナなど広くアブラナ科作物の根に感染し、その被害は国内にとどまらず世界的にも問題となっている。主に土壌中で耐久態である休眠胞子の状態で存在し、宿主の存在を感知すると発芽して遊走子となり、宿主の根の細胞内に侵入し、根こぶ形成に至ると考えられている。また、こぶの中で大量に休眠胞子を形成し、それがこぶの腐敗とともに土壌に拡散して、次年度の感染源となる。
本病に関しては、作付前の土壌の菌密度を測定することで、ある程度の発病予測が可能となっている。これまでに私たちはリアルタイムPCRを用いた菌密度測定システムにより、現地圃場の発病予測を行ってきたが、その予測が大きく外れる事例が複数見られたことから、その原因を調べたところ、抵抗性を打破した根こぶ病菌系統の中に、既存の検出条件では検出されない菌系統が存在することがわかった。そこで本研究では、すべての菌系統を検出できるようなシステムの再構築を行うとともに、当該菌系統の遺伝的、生態的特性を明らかにする。
また、調査圃場の中には菌密度が極めて高く現行の防除対策だけでは発病を抑制できない圃場が存在する。土壌中の本菌の休眠胞子は耐久性が極めて高く、休耕放置による菌密度の自然減少には期待しにくいことから、そのような圃場を栽培可能な圃場に回復させるためは、積極的な対策を講じる必要がある。本菌は耐久性の高い胞子を形成する一方で絶対寄生性でもあり、胞子発芽後は速やかに宿主に感染できなければ比較的短期間で死滅すると考えられることから、宿主の非存在下で休眠胞子を発芽させることは菌密度の低減に有効である。そこで花菜休閑期に栽培が可能な緑肥植物群の中から、菌密度低減効果を示す有望な植物を選抜するとともに、休眠胞子発芽を誘導する生理活性物質の探索を行う。
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2018年7月23日作成