Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2018(平成30) 年度 生存圏科学 ミッション研究 3

研究課題

歴史文献中のオーロラ及び黒点記録を用いた過去の太陽活動の研究

研究組織

 代表者 磯部洋明(京都市立芸術大学美術学部)
 共同研究者 海老原祐輔(京都大学生存圏研究所)
三津間康幸(東京大学総合文化研究科)
早川尚志(大阪大学文学研究科)
玉澤春史(京都大学防災研究所/京都市立芸術大学)
河村聡人(京都大学理学研究科)
岩橋清美(国文学研究資料館)
関連ミッション
  • ミッション3 宇宙生存環境
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

本研究の目標は、歴史文献中に記述されている天体現象、特にオーロラと黒点の観測記録を発掘することにより、過去の太陽活動、オーロラおよび地磁気嵐を復元し、自然科学的研究に応用することである。

人類生存圏に対する太陽活動の影響は甚大である。太陽フレア等の短期変動は人工衛星や送電網など現代文明のインフラに被害を与える。また近年の太陽型恒星におけるスーパーフレアの発見や、放射性同位体の解析による8~10世紀の極端な宇宙線イベントなど、近代文明が未経験の極端宇宙天気現象が太陽で起きる可能性が示唆されている。このため歴史的記録から過去の太陽活動を探る研究は近年急速に注目され始めているが、そのきっかけはH27年度の生存圏萌芽研究、H28,29年度のミッション研究に採択された申請者らによる本研究である。これまでに中国の正史のオーロラ・黒点記録のサーベイ、10世紀のスーパーフレア候補の検証、世界最古のオーロラの記録の発見、1770年の巨大磁気嵐の研究などで計15本の欧文査読論文が出版されている。特に1770年の巨大磁気嵐は、日本各地のオーロラ観測記録とオーロラ発光のシミュレーションを比較検討し、これまで知られていた最大級の磁気嵐(1859年のキャリントンイベント)に匹敵する規模であったことを定量的に明らかにした。

磯部洋明: 2018(平成30)年度生存圏ミッション研究 図図 松阪市所蔵の「星解」写本に記載されている1770年9月に京都で観測されたオーロラの図(左)と、オーロラ発光のシミュレーション(Ebihara et al. 2017)

今年度は、海外史料、特に欧州における調査を生存圏ミッション研究として推進したいと考えている。歴史史料を用いた過去の太陽活動の研究を行っている研究グループが欧州にいくつかあり、それらのグループとの連携を深めて国際共同研究へと発展させることも企図している。具体的には、(1)欧州における17–18世紀の黒点スケッチの調査と(2)バビロン天文日誌を中心とした中世以前のオーロラ記録の発掘および欧州研究者との連携強化を行う予定である。

(1)欧州における17–18世紀の黒点スケッチの調査

17世紀以降の黒点数の変動は太陽活動の長期変動を示す基礎的なデータとしてベルギー王立天文台により整備・公開されているが、個別の磁気嵐に対応する黒点の有無やそのサイズ、出現緯度経度等は実際の黒点スケッチを調べる必要がある。これを可能にする可能性がある史料は欧州各地に点在している。英国長期滞在中の共同研究者(早川)を中心に、黒点スケッチを中心とした欧州の史料の収集にあたる。具体的な調査先と候補となる史料としては、スウェーデン・ウプサラ大学文書館の数学物理コレクション、英国王立天文学会の黒点スケッチ群、フランス・パリ天文台の観測記録および国立図書館の観測記録・歴史写本コレクション、ドイツ:ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー、キルヒ写本コレクションを予定している。

収集した黒点スケッチと17–18世紀の低緯度オーロラ候補記録を照合し、オーロラである蓋然性およびそれが太陽面がどのような状態にある時に発生したのかを吟味する。

(2)バビロン天文日誌を中心とした中世以前のオーロラ記録の発掘と欧州研究者との連携強化

太陽の長期変動の情報や、放射性同位体に見られる宇宙線イベントとの照合のためには、より長期的なオーロラ記録のさらなる発掘が必要である。このためには、欧州や西アジア地域などを中心とした地道な史料発掘を今後も継続する必要があると共に、海外共同研究者との連携強化が欠かせない。粘土板に刻まれたバビロン天文日誌には未解読のものがまだ大量に存在し、その多くは大英博物館やベルリン中央博物館に所蔵されている。世界でも数少ないバビロン天文日誌の専門家である本研究共同研空者の三津間が大英博物館へ未翻刻粘土板の調査を本年度中に行う予定である。また欧州調査に合わせて、これまでの協力実績のあるスペインExtremadura大学のJ. M. Vaquero博士らのグループやRutherford Appleton LaboratoryのD. M. Willis博士や、史料情報の共有や共同での研究資金獲得等について検討を進める。

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2018年8月29日作成

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