Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2017(平成29)年度 生存圏科学 ミッション研究 20

研究課題

ダイズのセシウム吸収関連遺伝子GmHAK5の評価

研究組織

 代表者 二瓶直登(東京大学大学院農学生命科学研究科)
 共同研究者 杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
上田義勝(京都大学生存圏研究所)
伊藤嘉昭(京都大学化学研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

6年前の東京電力福島第一原発事故により、森林、居住地域とともに、食糧生産の場である広大な農耕地も放射性物質(主に放射性セシウム)に汚染された。除染作業もすすみ、多くの地域で避難指示も解除され、今後このような地域でも農業が再開する。

二瓶直登: 2017(平成29)年度生存圏ミッション研究 図

現在、出荷流通に関する基準値(放射性セシウム濃度100 Bq/kg)を超過する農作物はほとんどないが、ダイズの放射性セシウム濃度は他の作物より明らかに高い。ダイズは福島県内で第2位の生産面積を占める作物であり、ダイズの安全栽培は福島県の農業復興に欠かせない。これまでに、ダイズは放射性セシウムを成熟期間際まで吸収すること(イネは凡そ出穂期まで)、体内に取り込まれたセシウムのうち40%以上も子実に蓄積すること(イネは10 %程度)、子実に蓄積した放射性セシウムは子実内に均一に分布すること(イネは胚と表層に局在)などを申請者は明らかにし、ダイズの放射性セシウム濃度が高い理由を推定した。また吸収メカニズムに関して、溶液のカリウム濃度が高いとセシウム吸収が抑制すること、カリウム含量が多いダイズほどセシウム吸収は低いことなどから、根域のカリウム濃度が大いに関与していることを示した。シロイヌナズナではセシウム吸収に、カリウムを取り込む一部の輸送体(High affinity K trasporter:HAK5)が確認されており(Qi et al.2008)、申請者らも栽培溶液のカリウム濃度が低い時にダイズのGmHAK5の発現を確認し(図)、現在、アグロバクテリウムを用いてカリユタカのGmHAK5ノックダウン系統を作成している。

本申請では、GmHAK5ノックダウン系統ダイズのセシウム吸収機能解析を行う。セシウム吸収にGmHAK5の関与が示されれば、シロイヌナズナ以外の植物で初めての成果となる。

1)GmHAK5の発現解析、およびセシウム・カリウムの吸収評価
 異なる濃度のカリウム溶液にてノックダウン系統を栽培し、地下部のGmHAK5の発現をPCRで確認するとともに、それらの環境で栽培したダイズのセシウムとカリウム吸収を137Cs(半減期30年)、42K(半減期12時間)のダブルトレーサー法を用いて同一個体で評価する。

2)子実への蓄積評価
 福島県の放射性セシウム汚染土壌を用いてノックダウン系統をポット栽培(無カリ施肥)し、植物体、子実の放射性セシウム含量を評価する。

二瓶直登: 2017(平成29)年度生存圏ミッション研究 図

将来的にセシウムを吸収しないダイズ育成を目標とする本課題は、営農再開や安全な農産物生産に向けた対策を講じるだけでなく、生存圏全体の問題として世界の食料問題や物質循環へも波及する重要な研究課題の一つである。この課題は大学間連携による研究の相乗効果を発揮させるべく、東京大学(RIを用いたトレーサー試験)、京都大学(遺伝子発現)それぞれの長所を活かした試験を行い、ダイズの放射性セシウム吸収の原理解明を行う予定である。

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2017年7月31日作成

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