Research Institute for Sustainable Humanosphere

2017(平成29)年度 生存圏科学 ミッション研究 11

研究課題

宇宙圏環境を定量的に理解する新観測手法(WPIA: Wave-Particle Interaction Analyzer)に関する研究

研究組織

 代表者 小嶋浩嗣(京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 加藤雄人(東北大学大学院理学研究科)
充(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
関連ミッション
  • ミッション3 宇宙生存環境
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

宇宙圏は、太陽風プラズマおよび惑星上層大気が電離されてできた惑星プラズマで満たされた環境である。通信衛星に代表される宇宙インフラも、このプラズマのダイナミクスによって決定される宇宙環境中に置かれいる。そして、その環境変化にはプラズマ波動とプラズマ粒子(イオン、電子)との相互作用が大きく寄与している(波動粒子相互作用)。この相互作用を定量的に観測からおさえ、そこで発生しているエネルギーフローを明らかにし、その結果として現れる宇宙環境変化を理解することは、生存圏としての宇宙を理解することであり、各種宇宙インフラを安全に運用していく上で非常に重要である。この波動粒子相互作用を定量的におさえることのできる新しい観測手法が本研究グループによって提案された。世界的にも誰も行ったことのないこの新手法はWPIA(Wave-Particle Interaction Analyzer)と名付けられ、従来まったく不可能であった波動粒子相互作用の定量観測を実現することができる。このWPIAが2016年12月に打ち上げられた我が国の観測衛星ARASEに搭載され、初期チェック運用が終了し、実際の観測データが蓄積され始めた。そして、地球放射線帯生成・消滅メカニズムの定量的理解に向けて詳細解析を本研究でスタートさせる。本研究はARASE衛星において世界で初めて行うWPIA観測から、まだ誰も定量的にみたことのないプラズマ波動と粒子間のエネルギー授受を算出することを目的とする。

プラズマ波動とプラズマ粒子のエネルギー授受は、磁場は仕事をしないためm: 粒子質量, V: 速度, E: プラズマ波動電界ベクトル, V: 粒子速度ベクトル)という単純な式で表される(放射線帯では相対論効果を考慮する必要があるが、本質的には同様である)。この物理量を従来の観測では捉えることができなかったが、ARASE衛星のWPIAでは、それを可能とした。図に従来の観測手法とWPIA観測の違いを示す。WPIAでは従来「固まり」としてしか評価していなかったプラズマ粒子の観測情報を、一つ一つ捉えて、プラズマ波動の波形データと組合わせることにより、上式における電界ベクトルと速度ベクトルの位相差を検出し、その情報からエネルギー授受を定量的におさえることができる。この定量性を精度よく実現するためには、プラズマ波動観測データ、プラズマ粒子データの精度よいキャリブレーションが非常に重要である。本研究では、ARASE衛星データの厳密なキャリブレーションを行う試みから始め、その結果を踏まえて、世界初のWPIA計算によるプラズマ波動と粒子間でのエネルギー授受量を算出することを試みる。

小嶋浩嗣: 2017(平成29)年度生存圏ミッション研究 図

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2017年7月31日作成

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