Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2016(平成28) 年度 生存圏科学 ミッション研究 26

研究課題

持続的な熱帯林業プランテーションにむけた生態系管理

研究組織

 代表者 吉村剛(京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 藤田素子(京都大学東南アジア研究所)
大村善治(京都大学生存圏研究所)
小林祥子(玉川大学農学部)
Muhammad Iqbal(Daemeter Consulting)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

背景・目的

熱帯の林業プランテーションは集約的な造林と短期伐採によって,天然林を収奪的に利用することなく,木質バイオマスの持続的な供給を可能にする.しかし,プランテーション造成には,生物多様性や生態系サービスの減少を引き起こすリスクが存在する.これまでの申請者らの研究では,プランテーションに残された天然林には比較的高い生物多様性がみられ,地域の生態系サービスの維持に貢献すると考えられている.しかし,本研究の対象地では,度重なる森林火災による天然林の劣化とサルによるアカシアの樹皮剥ぎによって,持続的な木材生産活動が脅かされ,アカシアからユーカリへの転換を余儀なくされた.本研究では,プランテーション生態系の健全性を生物多様性から評価し,長期モニタリングを視野に入れた持続的なプランテーション管理につなげるための基礎的な知見を提供することを目的とする.

本研究の対象地では,2008年に鳥類の生物多様性調査を実施しており,同一地域での鳥類相の比較が可能である.一般に,ある地域の多様性評価は他地域との比較によってなされるが,周辺景観の違いや地形要因の影響を受けやすく,結果の解釈が難しいケースが多い.本研究では,樹種転換の前後の状態を比較することができる極めて稀な機会を生かし,プランテーション生態系がどのような変化を遂げたのか,また持続的な生産のためにはどのような管理がなされるべきなのかを議論する.申請段階では鳥類・シロアリ・菌類を研究対象種としたが,予算的な制約が大きいため,過去に調査済みである鳥類のみを対象種とし,本年度はシロアリ・菌類については今後の研究のための準備段階と位置付ける.

以上のことから,本研究の目標は,プランテーション生態系の構成要素である天然林と人工林(ユーカリ林)の鳥類多様性を調べ,同一地域での過去の調査結果との比較によって,鳥類多様性の維持に貢献する環境要因(ランドスケープおよびマイクロハビタット)を明らかにすることとする.

研究計画・方法

調査地

インドネシア,南スマトラ州ムアラ・エニムに位置するMusi Hutan Persada社(以下MHP社)の管理する林業プランテーションで調査を行う.人工林のほかに,小面積の天然林がパッチ状に残されている.人工林のほとんどは2010年以降,徐々にユーカリへと転換が進められた.天然林の一部は野火の延焼を受けて,樹冠が枯死した.MHP社が設置しているPermanent Sampling Plot(以下PSP)の一部をユーカリの調査ポイントとし,また天然林の調査ポイントを加えてランドスケープ・マイクロハビタットの解析および鳥類多様性調査を行う.

ランドスケープ・マイクロハビタット解析

マイクロ波衛星(ALOS2/PALSAR)画像と地上センサスの情報を用いて,プランテーション内の人工林/天然林の分布を判別し,ランドスケープ構造のベースマップを作成する.また,生物のマイクロハビタットとしての森林の階層構造,林齢,優占種等の調査を行い,それらを各調査ポイントの環境要因とする.なお,小林・大村が中心となって行うランドスケープ解析の予算は,別途申請中であるため,本申請では計上しなかった.

鳥類多様性調査

各調査ポイントにおいてポイントセンサス法を用いて10分間観察を行い,半径25m以内に出現した種と個体数を記録する.調査ポイントごとに,朝(6:00–10:00),夕方(14:00–18:00)の各4回ずつ計8回以上のセンサスを行う.

解析

多変量解析(NMDSなど)を用いて,環境要因と生物多様性の関係を解析し,プランテーション生態系が8年間の間にどのように変化したのか,またどのような環境であれば生物多様性を維持することができるのか考察する.生態系に関する上記の知見を元に,持続的な生産活動のためにはどのような管理を行ったらよいかについての提言も行う.

ページ先頭へもどる
2016年8月5日作成

一つ前のページへもどる