Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2016(平成28) 年度 生存圏科学 ミッション研究 17

研究課題

船舶搭載GNSSによる水蒸気解析精度向上に関する研究

研究組織

 代表者 小司禎教(気象庁気象研究所)
 共同研究者 矢吹正教(京都大学生存圏研究所)
津田敏隆(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

周囲を海に囲まれた日本で度々発生する豪雨の予測精度を改善し,災害を軽減するためには,海上から進入する水蒸気を大量に含む気流の把握が重要である.米国のGPSに代表される衛星測位システム(GNSS)は,高精度水蒸気センサーとしても利用でき,気象庁は平成21年より国土地理院のGNSS観測網(GEONET)から得られた鉛直積算水蒸気量(PWV)を数値予報の初期値解析に利用している.近年,GNSS技術の進展により,移動体に搭載したGNSSからリアルタイムにPWVを解析する技術が開発されている(Shoji et al. 2016).我々のグループは,平成27年度の生存圏ミッション研究において,下関と釜山を航行するフェリーにGNSS受信機を設置し,近傍の地上GNSS点の解析と比較し,BIAS 0.3 mm,RMS 2 mmという高い精度でPWV解析が可能であることを示した.一方,種々の測定機器や固定物に囲まれた船上観測において,反射波(マルチパス)の影響を除去することが重要であることも確認された.

上述の背景を踏まえ,本提案では,気象庁の海洋気象観測船上でGNSSによる水蒸気観測を実施し,精度に影響を与えるノイズ源の影響評価を行い,その除去方法を開発する.この課題に取り組むことで,より小規模の船舶を利用したGNSS水蒸気観測が可能となり,海上でのGNSS水蒸気観測密度が増加することで,海上からの水蒸気流入の把握を通じ,豪雨の機構解明に貢献できる.

生存圏科学との関わり

地球温暖化に伴い,豪雨の発生頻度の増加が懸念されている.本研究で開発される手法が実用化されれば,豪雨の発生に対する海上水蒸気の役割,豪雨の発現機構の解明が進展する.豪雨予測の精度向上に貢献することで,持続可能な社会の発展に寄与できる.

研究計画・方法

本研究では,海洋気象観測船凌風丸にGNSS機器2式を設置し,以下の要因の影響評価を行う.①反射波,②観測機器,③海面状態,④船の姿勢,⑤速度,⑥電離層じょう乱.その上で,船舶搭載GNSSによる水蒸気観測に最適な解析手法の検討・開発を行う.

(1)スケジュール

2016年7–8月:準備(気象庁,業者と観測計画調整,傾斜計,魚眼レンズ等購入)
2016年9月末:気象庁海洋気象観測船凌風丸を利用.デッキ左側に既設のJAVAD製アンテナGrANT3に加え,デッキ右側にTrimble製アンテナZehyr2を新規に設置.傾斜計設置.
2016年9–12月:航海中観測
2016年12月末:二つのアンテナ位置を交換
2017年1–3月:航海中観測
2017年3月末:機器撤去,現状復帰

(2)GNSS可降水量の算出

解析に必要な衛星軌道暦は,GPS,GLONASS,QZSSを網羅する宇宙航空研究開発機構(JAXAの)開発するMADOCA暦(精密暦,リアルタイム暦)を利用する.解析にはGNSS解析ツール,RTKLIBを主に利用する.遅延量を可降水量に変換する際に必要な気温,気圧データは凌風丸の船上観測値を用いる.

(3)精度比較

凌風丸船上での高層ゾンデ観測,地上GNSS点での解析結果(船舶が地上観測点近傍を航行している場合)と比較する.

(4)成果報告

2017年2–3月に開催される,生存圏ミッションシンポジウムで課題の報告,学術誌への投稿を行う.

小司禎教: 2016(平成28)年度生存圏ミッション研究 図
凌風丸の高層ゾンデによる可降水量観測量(横軸)と船上GNSS解析(縦軸)との比較(2015年).(a)精密暦を利用した30秒解析.(b)リアルタイム暦を用いた30秒解析.(c)リアルタイム暦を用いた1秒解析.(d)航跡(黒丸はゾンデ観測点).(a)と(b)の違いは暦の精度を,(b)と(c)の違いは反射波の影響を反映している(Shoji et al. 2016).12UTCのGNSSに見られる顕著な負バイアスについて,本課題で取り組む.

Shoji Y., K. Sato, M. Yabuki, and T. Tsuda, 2016: PWV Retrieval over the Ocean using Shipborne GNSS Receivers with MADOCA Real-time Orbits, SOLA, vol. 12, (in press)

ページ先頭へもどる
2016年8月4日作成,2016年8月29日更新

一つ前のページへもどる