Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2016(平成28) 年度 生存圏科学 ミッション研究 9

研究課題

歴史文献中のオーロラ及び黒点記録を用いた過去の太陽活動の研究

研究組織

 代表者 磯部洋明(京都大学大学院総合生存学館)
 共同研究者 海老原祐輔(京都大学生存研研究所)
片岡龍峰(国立極地研究所)
早川尚志(京都大学大学院文学研究科)
玉澤春史(京都大学大学院理学研究科)
河村聡人(京都大学大学院理学研究科)
岩橋清美(国文学研究資料館)
塚本明日香(岐阜大学地域協学センター)
三津間康幸(東京大学大学院総合文化研究科)
関連ミッション
  • ミッション3 宇宙生存環境

研究概要

本研究の目標は、歴史文献中の記述された天体現象、特にオーロラと黒点の観測記録を、太陽活動及びオーロラ・地磁気嵐の自然科学的な研究に役立てることである。

背景には、太陽活動の長期的変動とその人類生存圏への影響に関する関心は高まっていることがある。マウンダー極小期などの太陽活動の長期変動(>10年)は地球気候と相関があることが長く知られているものの、そのメカニズムや近年の温暖化との関係は明らかになっていない。一方、太陽フレア等の短期変動(<数日)は人工衛星や送電網など現代文明のインフラに被害を与えることが知られているが、近年の太陽型恒星におけるスーパーフレアの発見(Maehara et al. 2012, Nature)や、放射性同位体の解析による8~10世紀の極端な宇宙線イベント(Miyake et al. 2012, Nature)など、近代観測の開始以降まだ起きていないような極端宇宙天気現象が太陽で起きる可能性が示唆されている。従って、恒星観測や宇宙線とは独立した過去の太陽活動に情報源への科学的要請が極めて高まっている。一方歴史文献研究の方でも、中国古典のデジタルデータベース化が進んだり、画像認識による歴史文献のデジタル化(テキスト化)が可能になったりするなど、歴史文献からオーロラ・黒点に関する記録のサーベイを行うための基盤が形成されつつある。

このため申請者らは、H27年度の生存圏萌芽研究に同研究課題名で申請、採択され、中国文献中のオーロラ・黒点記録のサーベイなどで過去の太陽活動について新たな知見を得た。日本やバビロニアなど中国以外の歴史文献の専門家の協力や、未読・未整理の文献を多数所持する京都の寺社の協力を取り付けるに至った。本研究は同生存圏萌芽研究を生存圏ミッション研究として発展させるものである。

今年度に行うのは主に以下である。

1) 1859年のキャリントンイベントと1770年の巨大オーロライベントの規模の検証

1859年に英国のキャリントンによって観測された巨大太陽フレア(いわゆるキャリントンイベント)非常に強い磁気嵐を伴い、今日に至るまで観測史上最大の宇宙環境擾乱現象とされている。同イベントに伴うオーロラ観測の記録は、Kimboll (1960)やGreen (2005)らによってまとめられているが、東アジア地域の観測は出展がはっきりしないものがいくつか記載されているのみではっきりしていなかった。昨年度の申請者らの生存圏萌芽研究において、今年度から共同研究者に加わった岩橋ら日本史研究者の協力を得て予備的調査を行った結果、少なくとも東アジアにおいては、1770年に日本中で観測されていたオーロラがキャリントンイベントに匹敵するかそれ以上の規模である可能性が出てきた。今年度はこれら2つのイベントに関して東アジアを中心に世界中の記録を吟味して、特に1770年イベントが歴史上最大イベントになるかを検証する。

2) 各地域のオーロラ記録の照合

歴史上の観測者はオーロラの物理的招待を知らないため、「空が赤く染まった」「夜に奇妙な虹が見えた」など様々な表現で記録しており、本当にオーロラを示すのがどうか不確実である。しかし、オーロラはグローバルな現象であるため、地球上の離れた2点間での同時観測があればオーロラであるという蓋然性は飛躍的に高まる。また、世界中の記録を付き合わせることによりオーロラの出現緯度分布を調べることもできる。このため、様々な言語・歴史に精通した研究者の協力により多言語・地域のオーロラ記録を照合することは非常に重要である。昨年度の萌芽研究でほぼサーベイを終えた中国正史における黒点・オーロラ記録を軸に、日本、バビロニア、ヨーロッパ等の各地域の記録を照合して記録の精度を向上する。

3) 京都の寺社の未読資料の調査

長い歴史を持つ京都には未読の資料が大量に眠っている。特に寺社の日誌等は気象や地震など様々な天変地異を比較的定常的に記録し続けており、黒点・オーロラを含む過去の自然現象記録の宝庫である。現在、複数の京都の寺社から協力の内諾を得ており、まずは上述の1859年や1770年などめぼしいイベントがあった時期を手始めに、未読資料の撮影と解読を今年度中に手がけたいと考えている。これらの資料は、200年以上の長期間にわたって一定の基準をもって書き継がれているため、極めて歴史的価値が高いと同時に、地震や気象などの研究にとっても意義のあるものであり、本研究はこれら他分野の研究者とも相談しながら慎重に進める予定である。

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2016年9月1日作成

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