Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2015(平成27) 年度 生存圏科学 ミッション研究 13

研究課題

土壌試料でわかる農生態圏の管理体系

研究組織

 代表者 高林純示(京都大学生態学研究センター)
 共同研究者 東樹宏和(京都大学人間・環境科学研究科)
小出陽平(京都大学白眉センター)
圭佑(京都大学農学研究科)
杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
斉藤大樹(京都大学農学研究科)
下野嘉子(京都大学農学研究科)
塩尻かおり(龍谷大学農学部)
雅之(龍谷大学科学技術共同研究センター)
松井健二(山口大学農学部)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)

研究概要

化学肥料や農薬に依存したこれまでの農業は、周囲の自然に甚大な負荷をかけ、我々だけでなく様々な動植物に負の影響を与えてきている。また薬剤抵抗性の害虫が多発し、薬剤に頼った防除には限界がある。生存圏環境の保全のためにも環境に優しい省力化有機栽培技術開発が不可欠である。

これまで農生態系における地上部と地下部の多様性がもたらす生物間相互作用のネットークと、それらの連鎖が農地の生産性(地力)に様々に影響することに関しては、経験則や断片的な知見があるだけであった。本研究は、生物間相互作用ネットワークに注目し、農薬や肥料の使用を最小化するための新技術開発を目的とする。具体的には、農家の少量の土壌サンプルの解析で農地生態系の近未来を予測・診断する技術基盤を開発し、地域レベルでその土地の状況に合わせて農薬や肥料の使用を最小化するシステム「スマート・アグリカルチャー」を提案するための基盤的研究を行う。

本研究は、水田およびその周辺環境(生活圏、森林圏、大気圏)に注目し、水田における(1)地上部、地下部の相互作用情報の集約と生態学的解析、(2)地上部と地下部の動態を媒介する生態情報化学物質の解析、および(3)地上部・地下部情報の集約と農地診断技術の構築、の3項目を実施する。各項目における研究計画・方法は以下の通りである。

 

項目1 地上部、地下部の相互作用情報の集約と生態学的解析

本研究項目では、害虫や天敵、雑草といった地上部の生物で構成される相互作用ネットワークが、地下部の複雑な微生物群集の動態とどのように連関しているのか解明する。2小課題からなる。

1-(1)地下から地上への効果:本小課題は、地下部の構造(土壌微生物群集)を解析することにより、地下部が地上部の動態(植物-害虫-天敵相互作用)に与える影響を大規模DNAバーコーディング技術をもとに解析する。

1-(2)地上から地下への効果:本小課題は、地上部の構成(作物品種や周辺雑草)を解析することにより、地上部が地下部(土壌微生物群集)へ与える影響を、定期的な野外調査で解析する。

地上部の生物群集動態と地下部の生物群集動態を同調させる鍵となるシグナル物質の同定を項目2との連携で進める。また項目3と共同で「地上部-地下部連関に関する情報のデータベース化」のための基盤整備を行う。

 

項目2 地上部と地下部の動態を媒介する生態情報化学物質の解析

本研究項目は、2小課題からなり、地上部と地下部の生物共生ネットワークを駆動する情報化学物質に関する網羅的解析を時系列を視野に入れて行う。

2-(1)不揮発性生態情報化学物質の機能解析:農業生態系では、多様な遺伝子型を有する作物が多様な微生物群と多対多の相互作用を営んでおり、さらに雑草を含む他の植物の混入が系を複雑にしている。根圏を大きな生物システムと捉え、その中での代謝物のメタボローム解析を実施する。

2-(2)揮発性生態情報化学物質の機能解析:地上部における生物間の相互作用ネットワークを駆動する主要な要因は、植物由来の揮発性の生態情報化学物質である。生物間相互作用を駆動する要因解明を、微量な揮発性物質のブレンドの可塑性と頑健性に注目し、高精度の揮発物質分析専用ガスクロマトグラフ質量分析計で解析する。

得られたデータを中課題1にフィードバックし、現地における機能解明を有機的な連携をとって進める。得られたデータは時系列解析を行う3-(1)にも提供する。

 

項目3 地上部・地下部情報の集約と農地診断技術の構築

本中課題では、項目1および2から得られた時系列データを用いて農業生態系の地上部と地下部の連鎖と共生ネットワーク構造を明らかにし、農地生態系の将来予測を行うための理論的枠組み及びデータベースの構築を目指す。3小課題からなる。

3-(1)地上部と地下部を繋ぐ時系列解析:地上部、地下部の生物群集および環境条件、関与する生態情報化学物質に関する時系列データ及び中課題3-(2)、(3)のデータから、各変数間(生物種の個体数、気温、土壌栄養塩量など)の因果関係を時系列解析によって検出する。

3-(2)品種管理体系と地上部-地下部の連関解明:栽培品種におけるゲノム変異が根内・根圏微生物群集のメタゲノム変異にどのような影響を与えるのかを明らかにし、3-(1)で時系列解析を用いて構築したモデルを多様な品種に応用することを目的とする。

3-(3)栽培管理体系と地上部-地下部の連関解明と情報収集小課題:3-(1)で時系列解析を用いて構築したモデルのバリデーションのため、イネをケーススタディーとして、様々な圃場で収集したカタログデータを提供する。

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2015年7月31日作成

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