Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2015(平成27) 年度 生存圏科学 ミッション研究 12

研究課題

船舶搭載GNSSによる対馬海峡の水蒸気変動と豪雨の機構解明

研究組織

 代表者 小司禎教(気象庁気象研究所)
 共同研究者 矢吹正教(京都大学生存圏研究所)
津田敏隆(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

目標

当課題では関釜フェリー株式会社の協力により、フェリー「はまゆう(http://www.kampuferry.co.jp/passenger/vessel/hamayuu.html)」に全球航法衛星システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)の受信機を設置し、以下の研究開発を行う。
(1)移動体に搭載したGNSS観測を用いた可降水量(PWV: Precipitable Water Vapor)解析の手法を開発する。
(2)対馬海峡上の水蒸気分布の特徴と大雨の関連を調査する。

背景

周囲を海に囲まれた日本で、度々発生する豪雨の予測精度を改善し、災害軽減に資するためには、海上から進入する水蒸気を大量に含む気流の把握が重要である。米国のGPS(Global Positioning System)に代表されるGNSSは、高精度水蒸気センサーとしても機能する。気象庁は2009年より国土地理院のGNSS観測網(GEONET)を用いたPWVを数値予報の初期値解析に利用している。近年、GNSS技術の進展により、リアルタイムに、さらに移動体においてもPWVを高精度に解析する技術が開発されている。我々のグループは、平成26年度の生存圏ミッション研究において、JAXAの開発するリアルタイムGNSS衛星軌道情報(MADOCA: Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis, https://ssl.tksc.jaxa.jp/madoca/public/public_index_en.html)が、水蒸気のリアルタイム解析にも有用であることを確認した。

概要

上述の背景を踏まえ、本提案では、山口県下関と韓国の釜山を航行する関釜フェリーの協力により、同社保有のフェリーにGNSS受信機を設置し、対馬海峡上空のPWVを連続観測する。解析にはリアルタイムに得られる衛星軌道・時刻情報のMADOCA、及び国際GNSSサービスの配信するリアルタイムプロダクト(http://igs.org/rts/products)を利用する。得られたPWVを、近傍の地上GNSS点や衛星搭載マイクロ波放射計の観測等と比較し、海洋上でのPWV解析の有効性、軌道情報の違いによる精度を評価する。さらに、対馬海峡の南北水蒸気分布を解析し、大雨事例の特徴を検討する。

特色

これまで船舶搭載GNSSによるPWV解析実験は、海洋研究開発機構や気象庁の観測船により行われてきたが、同一航路を往来する定期船を用いた観測実験は前例がない。2008年7月28日に兵庫県都賀川で発生した豪雨災害では、対馬海峡を通過して山陰沖に到達した水蒸気が重要な役割を果たしていた。気象学的にも対馬海峡を横断する経路上の水蒸気量把握は重要な課題である。

生存圏科学との関わり

地球温暖化に伴い、豪雨の発生頻度の増加が懸念されている。本研究で開発される手法が実用化されれば、豪雨の発生に対する海上水蒸気の役割、豪雨の発現機構の解明が進展する。豪雨予測の精度向上に貢献することで、持続可能な社会の発展に寄与できる。

スケジュール

2015年7月21日:フェリー「はまゆう」下見
2015年8月20日:「はまゆう」へのGNSS機器設置
2015年10月末、2016年1月初旬:データ回収
2015年10月末~:データ解析
2016年2月頃:生存圏シンポジウムにて結果を報告
2016年3月:機器撤収

小司禎教: 2015(平成27)年度生存圏ミッション研究 図 1
船舶に搭載した受信機でGNSS衛星からの搬送波を観測するイメージ.船舶写真は気象庁海洋気象観測船啓風丸

小司禎教: 2015(平成27)年度生存圏ミッション研究 図 2
気象庁海洋気象観測船,凌風丸に設置したGNSS受信機から推定したPWV(赤点)と,同船の高層ゾンデ観測によるPWV(青四角)との比較.2015年1月13日~18日.衛星軌道と時計誤差には,MADOCAリアルタイムプロダクトを利用した.

一つ前のページへもどる
2015年8月17日作成

一つ前のページへもどる