Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2015(平成27) 年度 生存圏科学 ミッション研究 1

研究課題

大気波動にともなう運動量フラックスの新計測手法の検証

研究組織

 代表者 Dennis Riggin (GATS Inc.)
 共同研究者 津田敏隆(京都大学生存圏研究所)
村山泰啓(情報通信研究機構)
新堀淳樹(京都大学生存圏研究所)
松本直樹(京都大学生存圏研究所)
Clara Yatini(インドネシア航空宇宙庁)
Rizal Suryana(インドネシア航空宇宙庁)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

地球大気の高度60–150 kmにある中間圏・下部熱圏(MLT; Mesosphere – Lower Thermosphere)と呼ばれる高度領域は、地球大気環境の天井部に位置するとともに、太陽活動の影響を強く受けている。つまり、MLT領域は我々が生存する大気圏と宇宙圏とを接続するインターフェース領域といえる。ところで、産業活動により地表付近で排出される、CO2をはじめとする様々な気体(大気微量成分)は、高度100 km程度まで広がっているグローバルな大気大循環により地球全体に輸送・拡散されている。この大気大循環は太陽放射加熱と同時に、下層から上方伝搬する大気波動によって駆動されていることが分かっている。ここで、大気波動が大循環を加減速する過程を理解するには、大気波動に伴う運動量フラックスを定量的に評価することが本質的に重要である。この物理量はこれまで大型大気レーダー(MUレーダー等)でしか精密測定できなかった。大型大気レーダーは世界で数点しかないため、運動量フラックスの全球的な分布は未解明のままとなっている。

最近、小型で簡便な流星レーダー(測定高度80–110 km、世界の数十点で稼働中)を用いて運動量フラックスを推定する新手法が提案されたが、その測定原理には不明確な仮定が含まれており、精度検証も十分に行われていない。本ミッション研究では、流星レーダーによる運動量フラックス測定技術の基本原理の妥当性を検討し、MUレーダーとの比較観測により測定精度を検証することを目的とする。また、1990年代よりインドネシアで運用してきた複数の流星レーダー観測結果も用いる。

本ミッション研究の具体的な研究方法は、これまで約30年間にわたり生存圏研究所が継続して運用している信楽のMUレーダーによる運動量フラックス測定(beam pair法)と流星レーダーによる測定(新手法)について、それぞれの観測手法から導出される運動量フラックスの相互比較を行う。この結果を基に、新手法の測定原理に含まれる重要な仮定:(1)流星レーダービームの探査領域を一様にサンプルするには相当数の流星が現れること、(2)流星レーダービームが走査する約200 km以上の空間領域において風速場が一様であること、が妥当かどうかを検証する。

一方、インドネシアの赤道上において、東西約4,000 km離れたパプア(Biak)と西スマトラ(Koto Tabang)で同一仕様の流星レーダーを運用しており、特に2011年6月以降に断続的ながら同時観測を行ってきた。これら2台の流星レーダーによる運動量フラックスの比較解析を行い、結果の整合性を調べることで新手法の妥当性を検討する。例えば、赤道域の中間圏では東西風に半年周期振動が現れるが、これは大気波動の影響を強く受けていると考えられている。この振動は全球規模で観測される現象であり、水平距離にして数千km以内では同様の振舞いを示すので、運動量フラックスの東西成分uw’ にも同様の半年周期が現れると期待される。

なお、本課題は生存研に外国人客員教授として2014年12月~2015年3月に招聘したDr. D. Rigginとの共同研究の進展である。また、インドネシアを中心にインド、太平洋域に分布する多くのレーダー観測データを用いた国際共同研究である。 本ミッション研究の具体的な実施計画は以下の通りである。

  • MUレーダーの乱流散乱を用いた beam pair法および流星エコーによる観測について、過去30年にわたり蓄積されてきた観測データベースを活用した統計解析を行い、中緯度(信楽)における運動量フラックスの東西成分uw’ の気候学的特性を明らかにする。
  • インドネシアで運用中の2台の流星レーダー(コトタバン、ビアク)の観測結果を比較する。流星レーダーを共同運用しているLAPANに最新データの収集を依頼する。
  • コトタバンの流星レーダーで得られた過去13年の長期観測データを用いて、赤道域の運動量フラックスの東西成分uw’ の気候学的特性を明らかにし、背景風変動との関連性を調べる。
  • ここで得られた新しい知見について学会で報告し、論文としてまとめて国際誌に投稿する。

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2015年8月24日作成

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