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2014(平成26) 年度 生存圏科学 ミッション研究 16

更新日: 2017/09/19

研究課題

大気中の波動・乱流特性の精密計測に関する日・米・インド国際共同研究

研究組織

 代表者 津田敏隆 (京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 Lakshmi Kantha (米コロラド大学)
橋口浩之 (京都大学生存圏研究所)
M. V. Ratnam (インドNARL)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 3 (宇宙環境・利用)

研究概要

大気圏において、PM2.5 やブラックカーボン等の微小な塵(エアロゾル)およびCO2、NOx、オゾン等の大気微量成分を輸送・混合する力学過程がレーダーや気球観測(ラジオゾンデ)により研究されている。力学過程のなかでも、中規模擾乱である大気重力波および小規模の大気乱流が重要である。大気重力波は運動量を伝える役割を果たすが、さらに、波動が減衰する過程で生成される大気乱流は物質を混合(乱流拡散)させる。ここで、これらの力学過程が地表付近から上空の大気層を連関させる様子を解明するうえで、鉛直流の精確な測定が鍵になる。

大気レーダーは、鉛直風をはじめ、これらの力学過程を定量的に観測できる最も信頼性の高い観測手段である。本研究では、信楽の MU レーダー、インド大気科学研究所(NARL)によるガダンキ MST レーダー、生存研がインドネシアで運用する赤道大気レーダー(EAR)で得られた観測結果を活用する。既に大気レーダーは、乱流強度と鉛直流を含む風速 3 成分を高精度で同時に測定できることが確認済みである。しかし、観測点が限られていることから、世界的な分布特性を知るには、他の定常観測データを併用することが重要である。

気球が浮力によって上昇する際に現れる微小な上下振動を鉛直流に関係付けようとする試みが行われているが、気球の膨張率、背景の気温、日射による加熱といった様々な誤差要因があり、鉛直流の推定についてこれまでのところ信頼に足る結果は得られていない。気球による鉛直流推定は上方輸送を非現実的に過大評価しているという批判もあり、大気レーダーとの比較による検証が求められている。本課題を中心的に遂行する Kantha 教授は昨年 9 月~12 月に外国人客員教授として生存圏研究所に滞在した。その際に、この気球の浮力変動および鉛直流に関する検討を行い、滞在中に MU レーダーとラジオゾンデの同時観測実験を行った。本研究ではこの観測データの解析を進めるとともに、ガダンキ MST レーダーとEARの過去のデータも利用する。

大気レーダーと気球という異なる手段で、同じ現象を同時観測し、特に鉛直流が気球観測で精度よく測定できることが明らかになれば、各国の気象庁が全球の約 900 点で定常運用している気球観測(ラジオゾンデ)を用いることで、将来的に物質輸送・混合の世界的な分布特性が明らかにされる可能性がある。

一方、Kantha 教授は GPS (GNSSk)掩蔽観測により乱流強度分布を推定する手法開発を行っている。GNSS 掩蔽法の高度分解能は気球と同程度であり、陸上・海上に関係なく、全球を観測できる優れた観測技術である。客員教授の際に、GNSS 掩蔽と MU レーダー・赤道大気レーダーとの同時観測データを比較・評価した。この研究成果について、7 月 28 日~8 月 1 日に札幌で開催される AOGS (Asia Oceania Geosciences Society)会合で発表する予定である。今般、AOGS 会合の機会に Kantha 教授を生存研に招へいし、論文投稿のためにこれらの研究成果について集中的に議論を行う。また、インドの NARL の大気レーダーとラジオゾンデとの同時観測実験を試行する。その成果を検討し、将来的にインド、インドネシア、信楽の大気レーダーの同時観測キャンペーンを企画する。

以上、本研究は、生存研が招聘した外国人客員教授との交流により始まった国際共同研究を推進するものである。同時にインド、インドネシアとの協力関係をより強固なものとし、さらに、赤道大気レーダーの国際共同利用の発展にも寄与するものである。

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2014年8月8日作成

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