Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2014(平成26) 年度 生存圏科学 ミッション研究 1

研究課題

土壌の全カルシウム含量は、土壌の酸緩衝能に影響を与えるか?

研究組織

 代表者 伊藤嘉昭 (京都大学化学研究所)
 共同研究者 整 (物質材料研究機構)
満 (兵庫県立工業技術センター)
矢崎一史 (京都大学生存圏研究所)
杉山暁史 (京都大学生存圏研究所)
谷川東子 (独立行政法人森林総合研究所)
平野恭弘 (名古屋大学環境学研究科)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

酸性雨が社会的に注目を浴びた 1970–90 年代から四半世紀がたち、日本国内では大気汚染を抑制する努力によりこの問題は収束したかのように考えられている。しかしわが国では依然として酸性雨が降っており、大陸からの越境大気汚染も日本の降水に強い影響を与えている(環境省「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング報告書(平成 20~24 年度)」, 2014)。近年、酸緩衝能が低い酸性岩等を基盤とする流域で河川や湖沼の経年的なpHの低下が複数報告され、酸性雨の長期的影響が顕在化しつつあることが懸念されている。土壌の酸性化は土壌劣化に直結し、ひいては湖沼の水質劣化にも波及する。そこで国土保全(森林圏および水圏の保全)に欠かせない土壌の酸緩衝能が、どのように決定されるのかを解明し、その能力が今後も維持されるのかを評価することが急務となっている。

土壌の酸緩衝能は、「交換性塩基含量」と「交換性アルミニウム含量」の2指標で大まかに示すことが可能である(Takahashi et al., Water, Air, and Soil Pollution, 130, 727–732, 2001)。我々は、この指標に基づき樹種などを統一した森林を、最も緩衝能の高いグループ(I)および最も低い土壌のグループ(IV)からも複数抽出し、物質循環調査を行っている。その過程で、植物は土壌の酸緩衝能を高めたり弱めたりする効果をもち、そのベクトルは森林におけるカルシウム循環量や土壌にもともと存在するカルシウムの量(全カルシウム含量)に依存する可能性があることがわかってきた。つまり、土壌環境に応じた適正な樹種を選択し森林を育成することで、土壌酸性化の進行を遅らせることができる可能性がある。

そこで本研究では、「土壌の全カルシウム含量が低ければ、植物が土壌から吸収し落葉として土壌に還元するカルシウム量(カルシウム循環量)が低く抑えられ、結果として表層に交換性カルシウムが貯留されない。反対に、土壌の全カルシウム含量が高ければ、植物が循環させるカルシウム量が増え、表層に交換性カルシウムが貯留し、酸緩衝能が高められる」という仮説を導き、これを検証する。具体的な本研究の目的は「全カルシウム含量と交換性カルシウム含量との関係を明らかにすること」である。まず1サイトにつき4か所で土壌断面を作成し、表層(0–10 cm 深)、下層(10–20、20–40 cm 深) 3 層から土壌を採取する。次に土壌を乾燥、微粉砕し、蛍光X線法により全カルシウム含量を測定し、グループ間で比較し、全カルシウム含量と交換性カルシウム含量との関係を検討する。最後に植物体のカルシウム含量を参考とし、最も酸緩衝能の高いグループ(I)および最も低い土壌のグループ(IV)でカルシウム循環量の違いを考察し、土壌の酸緩衝能に全カルシウムが寄与するかどうかを検討する。

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2014年8月14日作成

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