Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2013(平成25) 年度 生存圏科学 ミッション研究 19

研究課題

海岸林に生育する菌根菌の耐塩性機構の解明

研究組織

 代表者 松田陽介 (三重大学生物資源学研究科)
 共同研究者 矢﨑一史 (京都大学生存圏研究所)
高梨功次郎 (京都大学生存圏研究所)
谷川東子 (森林総合研究所関西支所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

日本の海岸部分には古くからクロマツに代表される植物が植栽され、その植物は強風、潮風などから沿岸地域を保護している。海岸林は居住地、農地の提供を可能にすることから人間生活の幅を広げてきたが、数十年来、マツ材線虫病によるマツ類の枯損が海岸林の劣化を招き、2011 年には東日本大震災による海岸林の壊滅的な被害が記憶に新しい。そこで海岸林における新旧の顕在化した問題の早期解決が求められている。海岸部の過酷な生育環境下で実生の生残を向上させ、生育を促進させる技術の開発は、海岸林の果たす機能をいち早く回復させ、安定的に維持させるためにはきわめて重要と考える。

クロマツは本邦の海岸林を構成する主要な樹種であり、その細根部分には土壌真菌類の外生菌根菌(以下、菌根菌)が定着している。この菌はクロマツ細根全体を菌糸で覆う共生体、外生菌根(以下、菌根)を形成する(図 1)。申請者らの調査では、実に、海岸に生育するクロマツ細根の 98 % 以上は菌根であった。このことは、土壌からの養水分の吸収は実質的に菌根菌を通して行なわれ、菌根形成が実生の生残・成長を左右することを意味する。さらに海岸部の恒常的な環境ストレス(塩類、熱、乾燥)を踏まえると、細根の外部を覆う菌根菌の存在は物理的な観点からもその保護に寄与する可能性もある。全国で実施した菌根菌の群集生態的な調査により、クロマツと共生する菌根菌の中で Cenococcum geophilum が、調査地にかかわらず常に優占していた。

本研究では、海岸部における環境ストレスの 1 つ、塩類(NaCl)に着目し、優占種 C. geophilum の耐塩性とクロマツへの環境耐性付与機能を、細胞レベルから個体レベルの異なるスケールから明らかにすることを目的とする。本提案はクロマツ-C. geophilum 共生系の生物間相互作用における Na イオン輸送の解明にチャレンジするだけでなく、器官、個体スケールにおける Na 分布の解明を通した塩類ストレス環境下におけるクロマツの生育様式の解明にも取り組むことから、得られる成果は今後の植栽技術に対して有用な情報を提供する。

松田陽介: 2013(平成25)年度 生存圏ミッション研究図 1. クロマツに形成されたCenococcum geophilum菌根(左)と菌根の横断面(右)
細根の表面には菌根菌が定着するため根毛は認められず、周囲が菌糸により完全に覆われている(右側の青色部分)

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2013年8月2日作成

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