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2013(平成25) 年度 生存圏科学 ミッション研究 16

更新日: 2017/09/20

研究課題

ATTREXと連携した熱帯対流圏界層脱水過程の研究

研究組織

 代表者 長谷部文雄 (北海道大学地球環境科学研究院)
 共同研究者 塩谷雅人 (京都大学生存圏研究所)
藤原正智 (北海道大学地球環境科学研究院)
政彦 (福岡大学理学部)
西憲敬 (福岡大学理学部)
隆 (名古屋大学環境学研究科)
宮崎和幸 (海洋研究開発機構)
荻野慎也 (海洋研究開発機構)
鈴木順子 (海洋研究開発機構)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

海洋や雲を形成し温室効果ガスとして地球環境を規定する水は、中層大気中でOHラジカルに姿を変え大気化学のあらゆる局面に関与する。こうして放射・化学・力学過程と複雑に関わり合いながら、それ自体が各過程の微妙なバランスの上に維持されている水蒸気は、現代中層大気科学の主要な研究対象の一つである。成層圏は、大気が熱帯対流圏界面を通過して流入する際に受ける氷結・脱水により、極度に乾燥している。近年、この脱水過程に関する理解は大きな変革を遂げ、熱帯対流圏界層(TTL)内の低温場を大気塊が準水平的に移流することこそがその本質であると理解されるに至った(Holton and Gettelman, 2001)。SOWER プロジェクトでは、その実態解明を目的にゾンデとライダーを用いた現場観測を精力的に展開してきた。本研究の目的は、SOWER が培ってきた実績を下に、欧米の研究者により 2014 年 1–2 月に熱帯西部太平洋域で実施される大規模な航空機観測 ATTREX/CONTRAST/CAST と同期した気球観測を実施し、これを機に一気に進むであろう TTL 科学の進展を主体的に担うことである。

インドネシアにおける観測は、赤道大気レーダーを用いた研究に関して結ばれた LAPAN-RISH 間の Technical Arrangement に基づき、LAPAN-SOWER-RISH の 3 者間で合意された Plan of Operation に基づいて行われてきた。本研究は、この PoO を更新して実施される。なお、観測には LAPAN の若手研究者の参加も求め、現地の科学レベルの向上にも貢献する。

TTL 内脱水過程の観測には、中部・西部太平洋上空の TTL 内低温域を水平移流しながら非断熱加熱によりゆっくりと上昇する大気を捉える必要がある。SOWER では航空機観測との連携や TTL 低温条件の観測に有利でライダーを保有している Biak に資源を集中させる。航空機観測の基地となる Guam に派遣するメンバーを介して航空機観測と密な連携を図り、各種同時観測や match 観測などの統合観測を実現する。ゾンデ観測には CFH 水蒸気ゾンデ、ECC オゾンゾンデに加えて雲粒子計数器 CPC を同時飛揚し、常時運用のライダーと合わせた粒子観測を行う。これにより、凝結核の有無や数密度などを特定しながら過飽和度の評価が可能になる。

静止気象衛星画像や海面水温分布、MJO 伝播状況の監視などによる現場観測の支援は、日本を拠点に実施する。大気塊の変質の理解に重要な流跡線予報は、利用する気象場や導出アルゴリズムに依存するため、複数のグループによる予報を参照しながら行い、相互比較により高精度化と信頼性の向上を図る。また、大気微量成分を含むデータ同化の手法の高度化にも引き続き取り組み、TTL 内脱水過程の解明に応用する。

長谷部文雄: 2013(平成25)年度 生存圏ミッション研究日暮の西の空で淡いピンク色に輝く巻雲。Biakにて2006年1月10日18:22 (LT) 撮影

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2013年7月25日作成

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