Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2013(平成25) 年度 生存圏科学 ミッション研究 1

研究課題

酸性度が大きく異なる土壌に生育するスギ・ヒノキの養分状態と酸性ストレス状態の解明

研究組織

 代表者 伊藤嘉昭 (京都大学化学研究所)
 共同研究者 整 (物質材料研究機構)
満 (兵庫県立工業技術センタ-)
矢﨑一史 (京都大学生存圏研究所)
杉山暁史 (京都大学生存圏研究所)
谷川東子 (森林総合研究所関西支所)
平野恭弘 (名古屋大学大学院環境学研究科)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

硫黄酸化物や窒素酸化物など大気から負荷される酸性物質は、森林土壌中のカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)といった生物にとって栄養である塩基類や、生物に有害なアルミニウム(Al)を溶出させる作用がある。このため過剰な酸性物質の供給により、土壌は酸性化し貧栄養になる。北米で観測されたサトウカエデの衰退は、Ca、Mg、カリウム(K)含量が低く Al やマンガン含量の過剰な酸性土壌でみられ、樹木の養分不足と毒性をもつ金属イオンに起因すると考えられている。日本の森林土壌は多かれ少なかれ火山灰を混入するため、火山灰風化物が電気をもつことにより外来物質を補足する力が強く、欧米と同じレベルの酸性物質が負荷されても酸性化しないといわれてきた。しかし近年、中部山岳地域のような酸緩衝能が低い酸性岩等を基盤とする流域で河川や湖沼の経年的な pH の低下が複数報告され、わが国においても酸性雨の長期的影響が顕在化しつつあることが懸念されている。さらに経済発達が著しいアジア大陸で排出されるイオウ・窒素酸化物の飛来(越境大気汚染)が、この現象を加速することが危惧されている。そこで我が国においても、森林生態系の植物が受けている酸性ストレスを現時点で把握することが急務となっている。

欧米の先行研究では、Ca が Al 毒性を緩和させことから、葉や根の Ca/Al モル比が 1 を下回ると植物に深刻な成長低下を引き起こす可能性があるとして、この比が植物のダメージ状態を示す指標として用いられている。ただし日本の植物は酸に対する耐性が強いと考えられており、この指標の閾値が正しく判定基準になるのかは疑問である。森林総合研究所では、日本の森林土壌を Ca、Mg、など塩基類含量と交換性 Al 含量の 2 指標により、4 段階の酸性度に分類している(Takahashi et al., 2001)。そこで本研究では、酸性の最も強い土壌と弱い土壌に成立する森林においての植物の栄養/酸性ストレス状態を把握するとともに、酸性土壌においては植物は Ca/Al モル比は低いが、枯死兆候がない樹木であってもこの指標が 1 を下回っている個体が存在するとの仮説を導き、これを検証する。具体的には、各植生から根と葉を採取し、養分元素含量、アルミニウム含量、マンガン含量、Ca/Al 比を蛍光X線分析法で測定し、植物の貧栄養の程度・酸性ストレスの程度をグループ間および植生間で比較する。植生は日本の代表的な造林樹種であるスギ・ヒノキ林に統一する。

伊藤嘉昭: 2013(平成25)年度 生存圏ミッション研究

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2013年8月7日作成

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