Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2009(平成21) 年度 生存圏科学 ミッション研究 15

研究課題

アルミニウムによる外生菌根菌の有機酸代謝変動の網羅的解析

研究組織

 代表者 服部武文 (京都大学・生存圏研究所)
 共同研究者 梅澤俊明 (京都大学・生存圏研究所)
鈴木史朗 (京都大学・生存基盤科学研究ユニット)
岩瀬剛二 (鳥取大学・農学部)
大和政秀 (鳥取大学・農学部)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

地球温暖化防止に向けた造林は、今後、食料生産と競合しない荒廃地で行う必要性がさらに増大する。地球陸地の 7 割が、酸性、アルカリ性、重金属汚染、等の荒廃地であり、内 3、4 割が酸性土壌との報告もある。酸性土壌では、アルミニウムが流出し、植物が生育できないか、生育しても阻害が生ずる。さらに、このような酸性土壌化をもたらす酸性雨により、従来健全であった森林でも破壊が進行している。

この現状を踏まえ、毒性を回避し、健全な樹木生育を図る方策を見出す事は大きな課題である。

外生菌根菌は、樹木に共生し、根よりも広い範囲に張り巡らせた菌糸を通して、土壌中の水分、ミネラルを供給し、樹木の生育を増大させる。そればかりでなく、高い毒性をもつ金属に対しても金属耐性を示す外生菌根菌が存在し、それらは、宿主植物を毒性から防御するためのさまざまな方策を持っている。中でも、キレート作用を持つクエン酸、シュウ酸、リンゴ酸などの有機酸を分泌し、重金属とキレート化合物を形成する事により、重金属の毒性を軽減または無毒化する機構は、重要性が高い。例えば、先行研究では、外生菌根菌が毒性金属に晒されると、このような有機酸、特に、シュウ酸、クエン酸の滲出が増大することが報告されている。

しかし、毒性金属による外生菌根菌有機酸生合成の応答は、酵素、遺伝子レベルでは、全く研究されていない。その理由の一つは、外生菌根菌の炭素代謝機構が、未だ十分解明されていない事が挙げられる。

そこで、本研究では、このような毒性金属の中でも、問題地域が広範なアルミニウムに着目する。すなわち、シュウ酸、クエン酸生合成を支える基本代謝経路である、解糖系、ペントースリン酸回路、TCA 回路をふくめた広範な代謝活性が、アルミニウムに対してどのように応答し変動するか、代謝中間体の量の増減を網羅的に解析する事により、解析し考察する事を目的とする。

現在、ゲノムが開いている外生菌根菌 Laccaria bicolor と、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸の生合成が確認されている、Suillus grevillei を、リン酸アルミニウムを添加、また、無添加の MMN 寒天培地にて、セロファンを引いた上で培養している(図)。今後、CE-MS (キャピラリー電気泳動質量分析装置)、また、GC-MS (ガスクロマトグラフ質量分析装置)を併用し、解糖系、TCA 回路、ペントースリン酸回路の有機酸代謝中間体量を網羅的に相対評価する。この結果と代謝経路ネットワークとの対応関係を考察し、その中間代謝物の合成酵素、変換酵素の遺伝子発現に変動があるか、今後の研究の足がかりとする。

本研究は、生存研ミッション 1 :環境計測・地球再生において、特に地球再生に関連し、アルミニウム毒性の高い酸性土壌荒廃地において、健全な植林を行う方策を見出す研究である。植林木に外生菌根菌を共生させ、その毒性を回避させる「樹木―外生菌根菌」共生系により執り行い、二酸化炭素を削減し地球温暖化を防止し地球再生に寄与するための基盤となる研究である。

服部武文 2009-15

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2009年10月13日作成

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