Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2015(平成27) 年度 生存圏科学 萌芽研究 3

研究課題

カニ殻由来の新繊維「キチンナノファイバー」を用いた軟骨組織再生材料の開発

研究組織

 代表者 伊福伸介(鳥取大学工学研究科)
 共同研究者 矢野浩之(京都大学生存圏研究所)
阿部賢太郎(京都大学生存圏研究所)

研究概要

申請者はカニ殻からキチン質のナノファイバーを製造することに成功している。本研究ではキチンナノファイバーの微細な形状(10ナノメートル)と優れた力学的強度、多彩な生体機能を活かし、コラーゲンと複合した軟骨再生のための足場材料を開発する。本材料は成形外科において優れた成形性・操作性を有する。また、炎症を誘発することなく自己治癒の困難な関節の軟骨の欠損部に対して足場として安定に存在し組織の再生を促進する。治癒後は体内で消化される。そのような全くの新規の軟骨再生材料を開発し、高齢化の進む現代社会において、人々の運動機能と健康を増進していく。そして生存圏における水産廃棄物の利用を促進する。

関節の軟骨欠損部位の修復には周囲の軟骨組織と強固に接着し、治癒するまでの間、高い機械的強度を維持できる足場が有効である。コラーゲンは高い水保持能力と生体適合性を併せ持つため、生体材料として成形外科において注目されている。しかし、コラーゲン単体では膝関節において体重を支える十分な強度が得られず、また、成形性と操作性に劣る。この欠点を解決する手段として、コラーゲンと高分子材料の複合化が挙げられる。

一方、キチンナノファイバーは次の特徴がある。1)ナノサイズによる莫大な表面積、2)優れた成形性および加工性、3)優れた機械的強度、4)炎症を誘発しない、5)生体内での高い親和性と消化性、6)創傷治癒の促進。

よって、キチンナノファイバーは軟骨組織を効率的に再生させる足場として良い鋳型となる。その複合体は関節の欠損部を充填する足場材料として優れた操作性と十分な強度を示す。また、軟骨の形成細胞の接着・誘導・増殖を促進し、速やかに軟骨を修復し、治癒後は足場は分解し役割を終える。以上、本研究は独自に開発したキチンナノファイバーの特徴を十分に活かした独創的なものである。軟骨組織の喪失は運動機能を大幅に低下させる。しかしながら関節軟骨や半月板は血管が無いため、自己治癒は極めて遅い。本研究は高齢化が進む中、国民の生活の質を高める点において意義が大きい。キチンはセルロースに継ぐ豊富なバイオマスでありながら、加工性に乏しいため、その量に見合った利用がされていない。本研究の達成はキチン研究の発展と利用拡大のための大きな足がかりになるであろう。また、日本はカニとエビの消費量が世界で最も多い。国内で大量に発生する廃殻の有効利用に繋がる。さらには国外も含めた日本海沿岸地域一帯に波及し、生存圏におけるバイオマスの利活用の促進とそれに伴う環境保護に繋がる。

本研究では、キチンナノファイバーの特徴的な形状、物性、機能を活かして、「キチンナノファイバー/コラーゲンの複合体」を作成し、関節の外科治療に利用可能な新規な高機能・高性能の軟骨再生材料を開発する。本研究の推進にあたっては、(a)および(b)の項目について検討する。

(a)キチンナノファイバー/コラーゲン複合材料の作製
       ① キチンナノファイバー/コラーゲンヒドロゲルの作成
       ② キチンナノファイバー/コラーゲンスポンジの作製
(b)キチンナノファイバー/コラーゲン複合材料の軟骨再生機能の評価

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2015年7月27日作成

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