Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2014(平成26) 年度 生存圏科学 萌芽研究 11

研究課題

炭素は樹木のどこに固定されるのか? —ラベリングとレーザー式同位体分析装置(TDLS)・イオン顕微鏡(NanoSIMS)によるアプローチ—

研究組織

 代表者 檀浦正子 (京都大学地球環境学堂)
 共同研究者 高橋けんし (京都大学生存圏研究所)
竹内美由紀 (東京大学大学院農学生命科学研究科)
小南裕志 (森林総合研究所関西支所)

研究概要

森林は、地球炭素循環において大きく複雑な機能をもつ。森林に蓄積された炭素も最終的には気体になって大気に戻っていくが、戻されるまでの時間はどこに固定されるかによって大きく異なる。呼吸として放出される炭素は数時間単位、組織に固定され枯死分解を経る炭素は数年単位、土壌中に残存する炭素は数万年というように。気候変動や林分の変化による長期的な変動予測のためには、炭素循環を構成する要素それぞれの成り立ちを理解し、因果関係を考慮した解析およびモデルの確立が求められる。温暖化に伴い、我が国の森林の主たる構成樹種に変動が生じつつあり、西日本でも落葉性のコナラにかわり常緑性のアラカシ等が北上してくる可能性が指摘されている。炭素の光合成産物分配の違いは樹種ごとの環境適応性を決める一因であり、森林の炭素循環に関する将来予測において重要な要素である。樹種ごとの炭素配分の特徴や因果関係が明らかになれば、広域の植生分布に対応でき、気候変動によって影響をうける樹種の特徴や、その理由の解明の一助となることができる。

炭素安定同位体を用いて、植物内での炭素の動態を研究するラベリング手法(例えば Epron et al., 2012)は、二酸化炭素の流れを解明するために非常に有効な手段である。これは、自然状態で約 1 % の存在比をもつ 13C を濃縮し光合成によって植物に取り込ませ、トレーサーとして用いることで、炭素の移動を追跡する手法である。そこで、本研究では、このラベリング手法を落葉広葉樹(ミズナラ)と常緑広葉樹(マテバシイ)を対象に適用する。本研究における特徴は、このラベリング実験後に植物が取り込んだ安定同位体炭素が、どこに取り込まれるのかを追跡するために、最新の手法を組み合わせる点にある。すなわち、1)呼吸として放出される炭素の追跡のための「気体の分析」(TDLS)、2)生長あるいは蓄積のために樹体に一旦固定される炭素の追跡のための「固体の分析(IRMS)」、3)その中で、生長、すなわち細胞壁等樹体を構成することになる炭素の追跡のための「固体の中の分布の観察(NanoSIMS)」である。ラベリング実験・追跡を行い、取り込まれた炭素が樹体をめぐる「循環速度」を計測するとともに、部位ごとに「滞留時間」を算出する。そしてこの値をもとに炭素が森林生態系をどのように循環し、とどまり、放出されていくのかを、「呼吸」、「蓄積」、「生長」にわけ、精密に記述し、両樹種を比較することを目標とする。

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2014年7月15日作成

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