Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2013(平成25) 年度 生存圏科学 萌芽研究 1

研究課題

木化は樹木を支えるか:樹木細胞壁モデルの力学特性

研究組織

 代表者 阿部賢太郎 (京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 西村裕志 (京都大学生存圏研究所)

研究概要

植物細胞壁中でリグニンが重合・堆積することを「木化」という。この木化は、樹木がその巨大を支える上で重要な役割を果たしている。リグニンの堆積による細胞壁の疎水化は、樹木の水分通導に寄与し、また脱水により細胞壁の物性も向上させる。さらに、セルロースやその他の多糖類によって構築されたネットワーク内部にリグニンが充填することにより、細胞壁は強固な繊維強化複合体構造を形成する。その他、木化は、繊維細胞同士の強固な接着や、樹体を支持するために不可欠なもう一つの要因である表面成長応力の発生にも寄与していると言われる。いずれにせよ、樹体の姿勢保持には文字通り「木化」が極めて重要な現象となる。

しかし、樹木細胞壁への木化(リグニン堆積)の力学的寄与を調べることは難しい。例えば、樹木細胞壁からリグニンを化学的に除去することにより、その前後の細胞壁物性を測定するという手段も考えられるが、微小な細胞壁の力学試験は容易ではない。

本研究では、実際に木材から単離した幅 4–15 nm のセルロースミクロフィブリル(束)からゲルを作製し(図左)、合成リグニンの足場(scaffold)として用いた。ゲルの表面および内部に合成リグニンを重合させ、ゲルの力学特性の変化を調べることにより、木化が樹木細胞壁に及ぼす力学的な影響を考察する。ミクロフィブリルゲルの使用により、力学試験に対して十分な寸法および強度を有する試料の作製が可能となる。また、木化の程度を、重量増加および電子顕微鏡等による直接観察から推察できるため、リグニン構造と細胞壁物性との関係に関して有用な知見が得られる。

ヘミセルロースの影響、重合したリグニン構造の詳細な解析および成長応力発生機構の解明等、木化現象に関して行うべき課題は山積しているが、実際の樹木細胞壁構造に近く、またリグニンの 3 次元構造化を可能とする本手法は、樹木の力学的性質における理解を深めるだけでなく、豊富な植物系バイオマス資源の 1 つであるリグニンの材料開発において構造および物性に関して有益な知見を提供すると考えられる。

阿部賢太郎: 2013(平成25)年度 生存圏科学萌芽研究

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2013年7月30日作成

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