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2012(平成24) 年度 生存圏科学 萌芽研究 4

更新日: 2017/09/23

研究課題

表面疎水化によるバイオナノファイバーの産業利用の促進:低コスト化、分散性・相溶性の向上

研究組織

 代表者 伊福伸介 (鳥取大学工学研究科)
 共同研究者 阿部賢太郎 (京都大学生存圏研究所)
矢野浩之 (京都大学生存圏研究所)
Zameer Shervani (鳥取大学工学研究科)

研究概要

我々はセルロースおよびキチン質のナノファイバー(NF)の製造方法を開発し、その製品化を目指している。これらのナノファイバー(以下、バイオ NF と呼ぶ)は極めて微細な形状と優れた物性が特徴である。そして、バイオ NF の莫大な表面積はセルロースやキチンが本来備えている機能を大幅に増幅し得る。よって、バイオ NF の特徴を活かした用途は構造材、電気電子、医療、食品、日用化成品、繊維まで幅広い。しかしながら、生物の紡ぎ出すバイオ NF は親水性の繊維であるため、以下の問題点が指摘されているが、未だにその有効な解決手段は見出されていない。すなわち、

(1)乾燥出来ない: バイオ NF はわずか 1 % 程度の粘性の水分散液として得られる。バイオ NF の効率的な利用には脱水して嵩と重量を減らす必要がある。しかし、乾燥すると水素結合を伴って強く凝集し、再びナノファイバーに変換することが困難になる。よってバイオ NF の乾燥は禁物である。

(2)有機溶媒、石油系材料との相性が悪い: バイオ NF は疎水性の有機溶媒に安定に分散出来ない。そのためバイオ NF の化学処理による改質や機能化が大幅に制限される。また、バイオ NF は素材を強化する補強繊維としての利用が有望視されている。しかし、プラスチックなど石油系の材料とバイオ NF は互いに相性が悪いため、バイオ NF を均一に配合できず、補強効果を効率的に発揮できない。

そこで、バイオ NF の表面を疎水性に改質する。これによって上述の (1) および (2) の問題を解決できる。すなわち、

1)バイオ NF の表面の水酸基を疎水性の官能基でキャップすることによって、乾燥に伴う強固な凝集を抑制できる。その結果、バイオ NF の乾燥が可能になる。乾燥した試料は嵩が少なく軽量で腐敗しないため、輸送コストの抑制や、保管場所の確保、保存方法の簡便さにおいて有利である。そして乾燥したバイオ NF は溶媒中で再び容易にナノファイバーに変換できる。

2)バイオ NF の疎水化によって有機溶媒中に均一分散できる。有機溶媒に分散したバイオ NF は多彩な化学反応による誘導体化が可能になる。また、塗料としての展開も広がる。また、石油系材料と相性が良くなるため、複合材料としての展開において補強効果を効率的に発揮できる。

伊福伸介: 2012(平成24)年度 生存圏科学萌芽研究

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2012年7月6日作成

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