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2011(平成23) 年度 生存圏科学 萌芽研究 6

更新日: 2017/09/23

研究課題

セルロースナノファイバーの濃厚ポリマーブラシ修飾による3次元階層構造化と新規ソフトマテリアルの創製

研究組織

 代表者 榊原圭太 (京都大学化学研究所)
 共同研究者 矢野浩之 (京都大学生存圏研究所)
辻井敬亘 (京都大学化学研究所)

研究概要

木質細胞壁の解繊技術の発展により幅 15 nm のセルロースナノファイバー(CNF)を安定に取り出す技術が開発され (Abe et al. Biomacromolecules 2007, 8, 3276)、CNF を利用した電子デバイスや高強度プラスチックなどの実用的な高性能材料が精力的に研究されている (Nogi and Yano, Adv. Mater. 2008, 20, 1849)。現在、取り出した CNF は水溶液中で絡み合っているため、フィルム内ではネットワーク状にランダム配向している(図 A)。ゆえに、CNF の力学的・光学的な物性のさらなる向上には、CNF の配列構造形成技術、すなわち CNF の 3 次元階層構造化、が必須である。

一般にポリマー材料の特性は、高分子鎖の一次構造の特性だけでなく、分子集合体としての高次構造の特性に大きく支配される。ゆえに、一次構造から高次構造に至る階層的な構造制御が肝要である。一次構造の制御には分子構造、分子量、分子量分布、位置規則性、立体規則性等があり、一般に制御重合反応(リビング重合)や高選択的高分子反応により実現しうる。一方、高次構造はその高分子の一次構造に大きく依存するとともに、加工プロセス、すなわちどのように集めるか、を検討することにより制御できると考えられている。

様々な材料表面に重合開始基を固定化した後にリビングラジカル重合を適用することで、一次構造が明確な “濃厚” ポリマーブラシの合成が可能となった。濃厚ポリマーブラシ系は、その高浸透圧性と高伸張配向構造に基づき、高圧縮弾性率、極低摩擦特性、サイズ排除特性、及び生体適合性などの新規な表面特性・機能を発現する(Tsujii et al. Adv. Polym. Sci. 2006, 197, 1)。さらに濃厚ブラシ付与微粒子による新規コロイド結晶化が見出されており(Ohno et al. Macromolecules 2006, 39, 1245)、濃厚ポリマーブラシ効果による高次構造形成が既に実現されている。

こで本研究は、生存圏における圧倒的蓄積量と優れた物性(軽量・高弾性率・低熱膨張係数・透明性)を有するセルロースナノファイバーに、“濃厚” ポリマーブラシという新しい分子組織体機能を賦与することにより始めて実現する「準ソフト系」階層構造(図 B)を達成することで、既存のセルロース材料・ポリマー材料の延長線上にはない新規ソフトマテリアルの創出を目指す。

榊原圭太: 2011(平成23)年度 生存圏科学萌芽研究

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2011年8月3日作成

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