Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2010(平成22) 年度 生存圏科学 萌芽研究 8

研究課題

宇宙空間における人体・衛星保護のための磁気シールド開発に関する基礎研究

研究組織

 代表者 成行泰裕 (高知工業高等専門学校電気情報工学科)
 共同研究者 小嶋浩嗣 (京都大学生存圏研究所)
臼井英之 (神戸大学システム情報学研究科)
永野優一 (高知工業高等専門学校電気工学科)

研究概要

21 世紀は「宇宙開拓」から「宇宙利用」へ移行する世紀と言われており、生活圏としての宇宙空間の重要性は今後一層増していくと考えられる。宇宙空間は高エネルギーの電子や陽子で構成されたプラズマで満たされており、 これらのプラズマの中でも高エネルギーの粒子は宇宙線と呼ばれる [1]。地球に住む我々は、地球の固有磁場と大気によってこれらの有害な宇宙線から守られてきたが、20 世紀中盤以降人類が大気圏外・地球磁気圏外へと生存圏を広げるにつれて宇宙線の脅威に直接曝されるようになった。具体的には航空機に乗る乗務員の被曝や半導体素子のソフトエラーがあげられる [2]。これらの影響は今後計画されている月・火星における長期の有人ミッションではより深刻な問題となり、人類の本格的な宇宙進出に向けては宇宙線からの人体・衛星機器の保護技術の開発・進歩が必須であると言える。

宇宙空間で宇宙線から人体などを守る方法については古くからいくつかの手法が提案されてきた [3, 4] が、近年までほとんど進展がなかった。しかし近年になり、月・火星への有人飛行が現実的なこととして議論し始められたこと、計算機が大きく進歩したことにより、磁場を使用したシールド(磁気シールド) [5] についての本格的な研究が進められつつある [6, 7, 8]。一方で、磁気シールドによって宇宙線の侵入がどの程度低減されるかを定量的に示した報告は無く、実現性に対する定量的な検討も十分ではない。特に、磁場そのものが人体・機器に与える影響を回避すること [8] や、磁場を発生させるためのコイルの検討などが重要な課題となる。これらの課題はミッション 3 「宇宙環境・利用」で掲げられている 7 つのミッション課題と相補的な萌芽性が強い課題である。そこで本研究では、月や火星などの地球磁気圏外への有人飛行時における人体等保護に有効な磁気シールドの概念設計・定量的評価を目的とし、磁気シールドによって高エネルギー宇宙線の侵入がどのように遮蔽・低減されるかの詳細な数値シミュレーションを行う。本研究では特に、これまであまり行われてこなかった網羅的なパラメータ研究を行い、磁気シールドの性能向上・低下において重要な条件を明らかにする。

[1] 桜井隆,小島正宜,小杉健朗,柴田一成 [著]: 太陽,日本評論社,2009.
[2] JAXA: http://www.jaxa.jp/
[3] Townsend, L. W, IEEE, 724–730, 2005.
[4] Parker, E. N., Space Weather, Vol. 3, 2005; 日経サイエンス2006年6月号.
[5] Levy, R. H., Afbsd-tn-61-7, Avco-Everett Research Lab. Research Report 106, 1961.
[6] Shepherd, S. G., and B. T. Kress, SPACE WEATHER, VOL. 5, NO. 4, S04001, doi:10.1029/2006SW000273, 2007.
[7] Bamford R et.al, Plasma Phys, Control Fusion 50, 124025, 2008.
[8] Shepherd, S. G., and J. P. G. Shepherd, JOURNAL OF SPACECRAFT AND ROCKETS, VOL. 46, doi:10.2514/1.37727, 2009.

成行泰裕: 2010(平成22)年度 生存圏科学萌芽研究双極子磁場で近似した磁気シールドによる宇宙線の遮蔽効果。双極子磁場の磁気モーメントが小さい場合は宇宙線が捕捉されてしまい多く被爆してしまうが、ある値で極大になり、その後遮蔽効果が現れてくる。

ページ先頭へもどる
2010年8月2日作成

一つ前のページへもどる