Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2010(平成22) 年度 生存圏科学 萌芽研究 3

研究課題

深宇宙探査機への宇宙天気アラートの研究

研究組織

 代表者 浅井歩 (京都大学宇宙総合学研究ユニット)
 共同研究者 大村善治 (京都大学生存圏研究所)
磯部洋明 (京都大学宇宙総合学研究ユニット)
石井貴子 (京都大学理学研究科)
羽田裕子 (京都大学理学研究科)
塩田大幸 (理化学研究所)

研究概要

太陽フレア(太陽面爆発現象)に代表される太陽表面上の磁気活動は、宇宙飛行士の被爆や地磁気嵐など、地球周辺の宇宙空間環境と人類の文明活動に大きな影響を及ぼしている。とりわけ、太陽フレアやコロナ質量放出現象に伴って発生する高エネルギー粒子や X 線・紫外線領域での急激な増光は、コンピュータの誤作動や帯電による故障などのため、人工衛星に代表される宇宙空間の飛翔体に大きな影響を与える。

太陽フレアの発生機構及びその人類生存圏への影響を理解・予測するための「宇宙天気予報」研究は既に世界中で活発に行われている。しかし、これらの研究は地上もしくは地球周回軌道及びラグランジュ 1 点(SOHO 衛星など)からの太陽観測に基づいている。従って、地球周回軌道の人工衛星に対しては、地球周辺環境の予報の一環として太陽活動の影響を予測・予報することが可能であるものの、例えば我が国の小惑星探査機「はやぶさ」や金星探査機「あかつき」のように、地球から遠く離れた軌道を取る深宇宙探査機に対して、太陽フレアや宇宙空間擾乱の発生予報(宇宙天気アラート)を出すことはできない。過去には、火星探査機「のぞみ」が太陽フレアの影響で故障する等、実際の被害も出ている。もし深宇宙探査機に対しても宇宙天気アラートを出すことが可能となれば、その間は危険なオペレーションを避けるなどの対策を取るなど被害を軽減できることから、このような宇宙天気アラートは深宇宙探査にとって極めて有用である。

そこで本研究では、深宇宙探査機への宇宙天気アラートシステム構築に必要な基礎研究を行うことを目的とする。2006 年に打ち上げられた米国の STEREO 衛星は、2 機の衛星が太陽からの距離約 1 天文単位で徐々に地球から離れながら太陽を観測している。STEREO 衛星の主な科学目的は、異なる角度から複数の視点で太陽を観測することにより太陽コロナや噴出現象などの 3 次元構造を明らかにすることであるが、同時に、地球に向いていない側の太陽表面を観測できることに他ならず、地球から離れた深宇宙探査機に対する宇宙天気アラートに使える可能性がある。本研究では、太陽活動に伴う様々な擾乱成分のうち、衛星・探査機に深刻な影響を与えるもののみを、STEREO 衛星等の限定された太陽面観測データからどこまで予測可能か検証する。また、深宇宙探査機へ宇宙天気アラートを出すための太陽物理学的基盤を築くと共に、探査機のオペレーションへの実装も検討する。

宇宙天気研究はこれまで、上述の通り、地球周辺環境に対してのものが主であり、このような深宇宙探査機に対しての研究は世界でもほとんど例がない。本研究は、太陽系探査の科学や人類の生存圏拡大のためにも基盤となる先進的研究である。

浅井 歩: 2010(平成22)年度 生存圏科学萌芽研究図: 2010年2月7日世界時2時30分ごろに発生したフレアを、地球側(中央: SOHO衛星)と前面(左: STEREO-A機)/後面(STEREO-B機)のそれぞれから撮影したもの。

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2010年8月4日作成

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