Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2009(平成21) 年度 生存圏科学 萌芽研究 15

研究課題

赤道域における季節スケールの古気候プロキシの開拓

研究組織

 代表者 渡邊裕美子 (京都大学・理学研究科)
 共同研究者 津田敏隆 (京都大学・生存圏研究所)
杉山淳司 (京都大学・生存圏研究所)
余田成男 (京都大学・理学研究科)
田上高広 (京都大学・理学研究科)
武 (名古屋大学・環境学研究科)

研究概要

地球環境の現在を知り、近未来における変化に備えるためには、近い過去にどのような気候/環境の変動があったかを詳細に復元し、その変動要因を探ることが必要不可欠である。とりわけ、我々が住むアジアの広域的な古気候/古環境の変動要因として、大気の対流活動が最も活発なアジア赤道域の変動過程を知ることは極めて重要となる。古気候/古環境を復元する媒体(プロキシ)として、海底や湖底堆積物のコア、氷床コア、鍾乳石、サンゴ、そして樹木年輪などがよく用いられている。その中でも樹木年輪は正確な年代決定ができ、年単位での気候復元が可能という大きな特長があるが、アジア赤道域の中核に位置しているインドネシアでの樹木年輪気候学に関する研究は非常に限られており、降水量や ENSO のプロキシとして年輪幅が使える可能性があると言う報告があるに過ぎない。樹木年輪を構成する諸要素(年輪幅、孔圏道管の平均面積、炭素・酸素同位体比など)はそれぞれ別の時期(雨期・乾期)の気象要素に敏感に反応すると考えられるので、複数の年輪構成要素を分析し、季節ごとの気象要素との相関解析を行い、有意な相関が発見されれば、季節スケールでの定量的な気候復元が可能になる。そこで、本研究では、赤道域の樹木年輪を用いて季節スケールの古気候プロキシを確立することを目的として、上述の複数の年輪構成要素を分析し、これらの時系列データと季節ごとの気象データとの相関解析を行う。世界に先駆けて、赤道域での樹木年輪をマルチプロキシで解析することにより、「赤道域における季節スケールの気候・環境変遷の復元」に向けた貴重な基礎的知見を得ることが期待できる。

申請者らのこれまでの研究において、インドネシア・西ジャワ産の樹木(スンカイ 1 個体)を用いて、過去 15 年分の樹木年輪データ(年輪幅、孔圏の道管面積、炭素・酸素同位体比)と気象データとの比較を行った。その結果、スンカイの年輪構成要素を複数分析することは、季節オーダーの気候を復元していくのに有効な方法であることが示された。

今後、同地域の異なるスンカイ試料について同様の分析を進め、個体間相関を検証し、重ねてプロキシとしての信頼度を評価する。これと平行して、東ジャワ産のチーク試料(樹齢 80 年) 3 個体を入手し、スンカイと同様の分析と 14C bomb peak 年代測定を行う予定である。14C bomb peak年 代(1960 年頃の核実験で生成された 14C 量の増大を年代機軸としている)を用いることにより、偽年輪に惑わされることなく、樹木の時間モデルを正確に決定することができる。さらに、より長期(80 年間)のデータ比較を行うことで、プロキシとしての評価をより明瞭に行うことが可能である。

上記の樹木(チーク・スンカイ)の分析を進めると共に、小氷期や中世の温暖期において、赤道域での高精度な気候/環境の変動パターンを検出することを目指し、樹齢のより長い樹木サンプルの入手も積極的に行っていくことも予定している。

渡邊裕美子 2009

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2009年9月15日作成

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