Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2008(平成20) 年度 生存圏科学 萌芽研究 9

研究課題

2008(平成20)年度萌芽ミッションプロジェクト 9
同位体トレーサーと土壌酵素活性を用いた森林土壌窒素動態の把握

研究組織

 代表者 徳地直子 (フィールド科学教育研究センター)
 共同研究者 服部武文 (生存圏研究所)

研究概要

森林生態系はこれまで木材生産によってわれわれの生活を支えていると考えられてきたが、このほかにも水源涵養、水質浄化などの生態系サービスが創出されている。近年、これらの生態系サービスが再評価されており、生存圏研究所のミッションである環境を保全しつつ持続的に木質資源を蓄積・利活用するシステムの基盤の構築のためには、まず森林生態系の環境(生態系サービス)創出に関わるメカニズムを明らかにすることが不可決である。

森林生態系の生態系サービスは、そのなかで最大のバイオマスをもつ樹木と大気・水・土壌などの環境との間の物質循環によって形成される。中でも窒素の循環は、生物にとって不可欠な多量必須元素であると同時に、有機態・無機態・正荷電(NH4+)・負荷電(NO3)などその形態をさまざまに変化させることにより、他の物質にも大きな影響を与える。申請者らのこれまでの研究により、森林生態系における窒素循環機構は樹木の生育段階によって大きく変化することが明らかになった。すなわち、土壌中での窒素循環は生育段階初期(幼齢期)には NO3 が優占する開放的な循環を行い、生育後期(高齢期)には NH4+ が増加する。しかしながら、これまでの方法では、微生物体への取り込み速度や他の養分物質との関係が明らかにされておらず、なぜ、窒素循環が変化するのかについて十分な説明ができなかった。

そこで、本研究では、従来無視されてきた微生物の取り込み速度を同位体トレーサーから推定し、近年著しく発達した蛍光を用いた土壌酵素の測定を加え、窒素の動態と炭素・リンなどの他の養分元素関係を明らかにすることを目的とする。この研究により、生育後期にある森林で窒素が形態的に動きにくくなる原因は、植物と競合関係にある微生物が寄与しているためか、あるいは、他の制限要素が生じているのか、などの考察を行う。またこれらのことから、森林の各生育段階での窒素循環およびその他の物質の状態が明らかになり、生育段階に応じた生育促進、伐採時期、などの木材資源の利活用への提言が行えるであろう。

試験地はこれまでデータの蓄積のある和歌山研究林およびその周辺の森林である(図 1)。試験地は集水域ごとに施業が行われた結果、非常に気象条件や地質条件の近い中で異なる林齢集水域が近接している。そのため、森林の発達段階の影響が抽出しやすい試験地となっている。この場所で、生育段階初期(林齢 0 歳)から後期(林齢 90 歳および天然生林)にかけて生育段階の異なる複数の集水域を選び、土壌養分・微生物活性などの測定を通じて、森林生態系の発達に伴う窒素循環の変化を明らかにする。

徳地直子 2008図 1 試験地の概況。数字は集水域の番号。色のついている集水域では量水観測を行っている。

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2008年8月1日作成

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