Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2008(平成20) 年度 生存圏科学 萌芽研究 6

研究課題

2008(平成20)年度萌芽ミッションプロジェクト 6
鍾乳石と熱帯樹を用いたアジア赤道域の気候・環境変遷の復元

研究組織

 代表者 田上高広 (理学研究科)
 共同研究者 津田敏隆 (生存圏研究所)
杉山淳司 (生存圏研究所)
余田成男 (理学研究科)
竹村恵二 (理学研究科)
陀安一郎 (生態学研究センター)
武 (北海道大学低温科学研究所)
渡邊裕美子 (理学研究科)

研究概要

地球環境の現在を知り、近未来における変化に備えるためには、近い過去にどのような気候/環境の変動があったかを詳細に復元し、その変動要因を探ることが必要不可欠である。とりわけ、我々が住むアジアの広域的な古気候/古環境の変動要因として、大気の対流活動が最も活発な赤道域の変動過程を知ることは極めて重要となる。本研究では、アジア赤道域の中核に位置するインドネシア・ジャワ島において、鍾乳石試料を用いた同位体/化学分析と年代測定、および、熱帯樹の成長輪の分析を行い、それらを気象の観測データも含めて高精度対比することにより、当該地域の気候・環境変遷を多元的に復元することを目的とする。これにより、エルニーニョ南方振動に代表される、熱帯域の気候・環境変動イベントを高い信頼度で過去にさかのぼって検出することが出来る。加えて、日本を含む中緯度域でも同様の高精度対比を行い、赤道域との比較検討を進める。これにより、陸域の気候・環境変遷を正確に復元するための方法論について、ほとんど前例のない貴重な基礎的知見が得られることが期待できる。

これまでの現地調査により、ジャワ島において熱帯樹試料が数多く得られている。また、鍾乳石についても、ジャワ島西部のスカブミ地域、中部のカランボロン地域、東部のグヌングシュー地域において、良質な試料を入手済みである。申請者らの昨年度の研究では、インドネシア・ジャワ島西部における過去 50 年分の鍾乳石の炭素・酸素時系列データと降水量との比較対応が行われた。その結果、当該地域において、鍾乳石が降水量の指標となることが示された。今後は、同様の分析/解析を中・東部ジャワにおいても行い、重ねて指標の信頼度を評価する。それと平行して、降水量データの無い、より古い時代の試料の分析を進め、エルニーニョ南方振動に代表される、熱帯域の気候・環境変動イベントに伴う降水量の変動を過去にさかのぼって検出する。

次に、同じ地域から入手した熱帯樹試料について、成長輪の観察と同定、および、複数セクションにおける縞数えを行い、熱帯樹成長の時間モデルを確立する。その後、成長輪ごとに綿密な安定同位体比分析を行う。試料からセルロース分を分離精製し、安定同位体用質量分析計により測定することにより、炭素・酸素・水素同位体比の高精度時系列データが得られる。これらの時系列データセットと、過去およそ 100 年間に蓄積された、当該地域の気象観測データとの比較対応を行う。気象観測により得られた、実際の降水量の年々変動とこれらの指標データを高精度対比し、上記のアプローチの信頼度評価を行う。時系列データ解析のために、相関分析やスペクトル分析などを行うことを予定している。以上のように、樹木の安定同位体比が熱帯域の降水量の指標と成りえるのか検証した上で、降水量データの無い、より過去にさかのぼって分析を進め、過去の降水量を定量的に復元する。

樹木・鍾乳石の 2 組のデータセットの比較も行い、2 つのアプローチの信頼度評価を行う。また、同様の分析/解析を大分県稲積と滋賀県河内の鍾乳洞でも行い、赤道域との比較検討を進める。以上より、気候・環境の変遷の復元について、信頼度の高い方法論を確立し、さらに古い時代、または観測点のない地域における降水量を高精度に復元することを目指す。

田上高広 2008

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2008年7月31日作成

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