Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2007(平成19) 年度 生存圏科学 萌芽研究 9

研究課題

2007(平成19)年度萌芽ミッションプロジェクト 9
アジア赤道域の気候・環境変遷の復元に関する基礎研究 —鍾乳石の同位体データと熱帯樹の成長輪データの高精度対比—

研究組織

 代表者 田上高広 (理学研究科)
 共同研究者 津田敏隆 (生存圏研究所)
杉山淳司 (生存圏研究所)
余田成男 (理学研究科)
竹村恵二 (理学研究科)
陀安一郎 (生態学研究センター)
高津文人 (生態学研究センター)
渡邊裕美子 (理学研究科)

研究概要

本研究の目的は、アジア赤道域の中核に位置するインドネシア・ジャワ島において、鍾乳石試料を用いた同位体/化学分析と年代測定、および、熱帯樹の成長輪の分析を行い、それらを気象の観測データも含めて高精度対比することにより、当該地域の気候・環境変遷を多元的に復元する事である。これにより、エルニーニョ南方振動に代表される、熱帯域の気候・環境変動イベントを高い信頼度で過去にさかのぼって検出する事が出来る。加えて、日本を含む中緯度域でも同様の高精度対比を行い、赤道域との比較検討を進める。これにより、陸域の気候・環境変遷を正確に復元するための方法論について、ほとんど前例のない貴重な基礎的知見が得られる事が期待できる。

これまでの現地調査により、ジャワ島において熱帯樹試料が数多く得られている。また、鍾乳石についてもジャワ島西部のスカブミ地域と中部のカランボロン地域において、良質な試料を入手済みである。そこで、まず、鍾乳石試料の状態が最も良いスカブミ地域をターゲットに、採取当時成長中であった鍾乳石から適切なものを選び、組織観察と年縞の同定、複数セクションにおける縞数え、および、ウラントリウム法と鉛 210 法を用いた放射年代測定を行う。このために、鍾乳石の薄片を作成し反射光と紫外線蛍光による顕微鏡観察が必要となる。以上により、鍾乳石の成長に関する正確な時間モデルが確立できる。次に、年縞ごとに綿密な安定同位体分析を行うが、このために、マクロドリルを用いて、縞構造に沿った 10 ミクロンオーダーの正確なサンプリングをする必要がある。得られたサンプルを安定同位体用質量分析計により測定し、酸素・炭素同位体の高精度時系列データが得られる。

次に、同じ地域から入手した熱帯樹試料について、成長輪の観察と同定、および、複数セクションにおける縞数えを行い、熱帯樹成長の時間モデルを確立する。その後、成長輪ごとに綿密な安定同位体分析を行う。試料よりセルロース分を分離精製し、安定同位体用質量分析計により測定することにより、酸素などの同位体の高精度時系列データが得られる。

最後に、これら 2 組の時系列データセットと、過去およそ 100 年間に蓄積された、当該地域の気象観測データとの比較対比を行う。鍾乳石の酸素・炭素同位体変動は、岩盤浸透水(ドリップウォーター)を通じて、鍾乳洞付近の局地的な降水量の指標となる事が知られており、事実これまでの予察的な研究結果から、赤道域でも良好な指標となる事が期待される。また、熱帯樹の酸素同位体変動も、樹液を通じて、局地的な降水量を反映する事が知られている。そこで、気象観測により得られた、実際の降水量の年々変動とこれらの指標データを高精度対比し、上記二つのアプローチの信頼度評価を行う。時系列データ解析のために、相関分析やスペクトル分析などを行う事を予定している。

加えて、同様の分析/解析を、中部ジャワのカランボロン地域においても行い、重ねて指標の信頼度を評価すると共に、エルニーニョ南方振動に代表される、熱帯域の気候・環境変動イベントを高い信頼度で過去にさかのぼって検出する。また、同様の分析/解析を大分県稲積と琉球諸島の鍾乳洞でも行い、赤道域との比較検討を進める。以上により、さらに古い時代、または観測点のない地域における、気候・環境の変遷の復元について、信頼度の高い方法論を確立する事を目指す。

田上高広 2007

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2007年8月31日作成

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