Research Institute for Sustainable Humanosphere

第262回定例オープンセミナー
波動粒子相互作用がつなぐ宇宙と地球高層大気

開催日時 2020(令和2)年11月18日(水) 12:30–13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525・オンライン(Zoom)
発表者 栗田怜(京都大学生存圏研究所・准教授)
関連ミッション ミッション3 宇宙生存環境
ミッション5 高品位生存圏

聴講希望の方は、ご所属、お名前、連絡先等記してメールにてお問い合わせください。
オープンセミナー事務局: rish-center_events@rish.kyoto-u.ac.jp
開催日当日午前10時までにご連絡ください。

要旨

宇宙空間は真空ではなく、希薄な電離気体(プラズマ)で満たされており、その中を様々な電波(プラズマ波動)が飛び交っている。プラズマが希薄なために、粒子間衝突によるエネルギーのやり取りは起こらないが、その代わりに、プラズマ波動の電界・磁界がプラズマの加速・消失に重要な役割を果たす。この、プラズマとプラズマ波動の間で起こるエネルギーのやり取りを波動粒子相互作用と呼ぶ。地球周辺の宇宙空間においては、さまざまなエネルギーを持つプラズマが固有磁場に捕捉され、地球を周回している。地球周辺の宇宙環境の乱れに伴い、人工衛星に障害を引き起こすような、メガエレクトロンボルト(MeV)のエネルギーを持つ電子が生まれることが知られているが、この生成には、波動粒子相互作用が密接に関係していると考えられてきている。また、プラズマ波動の種類によっては、MeV電子を宇宙空間から消失させるものもあり、宇宙空間でプラズマ波動を計測し、その特性を明らかにすることは非常に重要な研究課題である。

地球の磁場に捕捉された電子の消失は、プラズマ波動によって電子の運動の軌道が乱され、地球大気に衝突することで起こる。この大気との消失により、オーロラが発生することが知られている。オーロラの発光を担うのは、キロエレクトロンボルト(keV)程度のエネルギーを持つ電子で、高度100 km程度で大気との衝突で消滅する。一方で、更にエネルギーの高い電子は、より低い高度まで侵入し、大気の異常電離・加熱を引き起こす。この過程により、高層大気の化学反応の時定数に変化が起こり、窒素酸化物(NOx)や水酸化物(HOx)の量が増加し、結果としてオゾンの破壊につながる可能性が指摘されている。

波動粒子相互作用という過程によって、宇宙空間で非常に高いエネルギーを持つ電子が生成され、生まれた高エネルギー電子は大気へと侵入し、高層大気へと影響を及ぼすという、一つのサイクルが生まれている。本発表では、このサイクルに関して紹介し、プラズマ波動が、生存圏に重要な役割をもちうることを示す。

Seminar-0262_Kurita図1: 宇宙から大気へのエネルギーインプットと生成されたNOxの輸送過程(Marshall et al., 2020)

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2020年11月4日作成

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