Research Institute for Sustainable Humanosphere

第255回定例オープンセミナー
“土に空を接ぐ”木のはなし

開催日時 2020(令和2)年7月22日(水) 12:30–13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525・オンライン(Zoom)
発表者 高橋けんし(京都大学生存圏研究所・准教授)
関連ミッション ミッション1 環境診断・循環機能制御

聴講希望の方は、ご所属、お名前、連絡先等記してメールにてお問い合わせください。
オープンセミナー事務局: rish-center_events@rish.kyoto-u.ac.jp

要旨

「木に竹を接ぐ」という慣用句があります。辞書によれば、不調和やちぐはぐといったネガティブな意味で使われることが多いそうです。私の発表タイトルはその慣用句を捩ったものですが、異なるバックグラウンドを持つ研究者の協同の意義を強調するため、また、きょうご紹介する研究課題で対象としている自然現象そのものを端的に表現するため、という二重の、ポジティブな意図をもってこのようなタイトルにしました。

グローバルな気候変動の現状把握と精緻な将来予測は、持続可能な社会の実現を図るうえで根幹を成す問題です。私は、放射収支に大きな影響を与える温室効果やエアロゾルの動態を調べる研究を行っています。新しい計測技術の開発を基盤とし、それらをフィールド計測や室内実験に応用しています。きょうご紹介するのは、重要な温室効果気体の一つであるメタンガスの新しい発生源に関する研究です。IPCC報告書によれば、陸域からのメタンガスの最大の発生源は《湿地》とされています。私の問題意識は、そこに《湿地》としか書かれていない点にあります。いきなりですが、きょうの発表の結論を述べると、将来の気候変動予測を可能にするようなプロセスモデルを構築するためには、湿地を“単なる”湿地と認識するのではなく、そこで生起する多様な生物地球化学的なプロセスを理解し、定量化する必要性がある、ということです。いま私が着目しているのは、嫌気的な環境でも自生できるある種の樹木が、土壌微生物によって作り出された根圏のメタンガスを、大気中へと放出するという比較的最近見つかった現象です。「土に空を接ぐ」が如く、煙突のような機能をもつ樹木があるということです。イネやヨシなどの草本植物では同様の現象が知られていましたが、樹木で見出されたことに現象としてのユニークさがあります。同時に、気候変動予測に資するという視点から、この現象の定量化が必要です。樹木からの発生量を定量化するには、先にご紹介したような私の研究のバックグラウンドが威力を発揮しています(と思います)。《湿地》の構成要素の一つである樹木が、《湿地》全体に占めるメタン収支にどのくらい寄与しているかを明らかにすることを目指しています。一方で、樹木がメタンガスを発生するという現象そのものへの興味、つまり、なぜ樹木がメタンを出すのか?という問いに答えを見つけることは、私だけの力では不可能です。そこで、樹木の生理生態に詳しい人、土壌の微生物や物理過程に詳しい人と協同することによって、答えを見つけ出そうとしています。それは、本要旨の最初で触れたとおりです。

研究はまだ道半ばであり、取り組めば取り組んだだけ、新しい疑問や発見に遭遇しますが、この機会にご紹介をさせて頂きたいと思います。

印刷用PDFファイル(199 552 バイト) | ページ先頭へもどる
2020年7月13日作成

一つ前のページへもどる