Research Institute for Sustainable Humanosphere

第244回定例オープンセミナー
抗卵菌物質サプロルマイシンの生合成に関与する糖転移酵素遺伝子の同定

開催日時 2019(令和元)年5月29日(水) 12:30–13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525
発表者 川﨑崇(京都大学生存圏研究所・特任講師/ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション5 高品位生存圏

要旨

現在、サケやマスの養殖で大きな被害が報告されている「ミズカビ」(図. 1)に対して特異的な生物活性を示す抗ミズカビ剤であるサプロルマイシンEが放線菌から見出されている(図. 2)[1]。ミズカビが属する卵菌類の仲間には、陸上植物へ甚大な被害を与える『根腐れ病』や『立枯れ病』の起因菌になるPhytophthoraPythium属なども含まれている。ジャガイモ疫病菌のPhytophthora infestansがその代表例である。また、馬や犬などの動物にも感染することが知られており、人への感染例は、Pythium insidiosumの報告があり、重篤化する場合もある。これは、卵菌類と真菌類では、細胞壁の組成が異なることや分子系統学的に卵菌は、藻類に近縁とであることから既存の抗真菌剤が効果を示さない為と考えられている。したがって、抗卵菌活性などが担保できれば、養殖業に使用する抗ミズカビ剤や農薬として利用でき、養殖業や農業資源を守ることにもつながる。また、将来的に人の役に立つ薬剤の創製にも繋がる可能性がある。そこで、我々は、放線菌が生産する抗卵菌物質の生合成に関与する遺伝子の機能を解析し、その解析結果を活用した代謝デザインを駆使することで、特異的な作用を示す抗卵菌物質を創製できればと考えている。

放線菌Streptomyces sp. TK08046が生産する抗卵菌物質サプロルマイシンの活性の増大には希少糖のアキュロースが関与することが示唆されている。そこで、我々は特異的な作用を示す抗菌物質の創製を目指す第一歩として、サプロルマイシン生合成遺伝子クラスター [2] 内にある糖転移酵素遺伝子の解析を行った。糖転移酵素と相同性を示すsprGT1, sprGT2, sprGT3遺伝子破壊株の培養を行い、代謝産物のHPLCおよびESI-MSでの分析を行った。その結果、各遺伝子破壊株で遺伝子破壊により蓄積されたと考えられる代謝産物が確認された。本セミナーでは、遺伝子破壊株の代謝産物の解析を試みた成果について紹介すると共に今後の展望についても紹介する予定である。

Seminar-0244_Kawasaki 1図. 1 ミズカビに感染されたマス

Seminar-0244_Kawasaki 2図. 2 サプロルマイシン Eの構造

引用文献

[1] Nakagawa, K., et al. J. Antibiot. 65, 599–607 (2012).
[2] Kawasaki, T., et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 80(11) , 2144–2150 (2016).

印刷用PDFファイル(392 714 バイト) | ページ先頭へもどる
2019年5月20日作成

一つ前のページへもどる